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 銀行融資と資金繰りについてのお役立ち情報

   
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銀行交渉
     1.銀行の言いなりになっていませんか?

     2.押しの強さと度胸だけでは銀行交渉力はアップしない

     3.銀行交渉における自社の主張と落としどころ

     
4.銀行交渉において銀行より優位に立つにはどうするか

     5.銀行交渉において銀行の融資決定の仕組みをどう読み取るか

     6.銀行との適切な交渉のタイミング

    
 7.銀行への返済が滞ってしまい、銀行から呼び出しがきた

     8.社長の性格が銀行の融資審査を左右する


資金繰り
     9.資金繰りと銀行交渉ができる人材がいない

    10.資金繰り表を作成しない小さな会社が多いわけ

         11.資金繰り表の作成が苦手な人が多いわけ

         12.小さな会社では日繰り表が大事です

         13.小さな会社で銀行に頼らない資金繰りは可能か?

         14.2期連続で赤字決算、資金繰りで頭が痛い


銀行選び
    15.メイン銀行は必要か?

    16.メイン銀行の態度変化にどう対処するか?

    17.取引銀行の数は一行でよいのか、それとも複数行が必要か?


銀行融資の申し込み
        18.銀行に融資を申し込みたいが、どういう準備をしてどういう手順を踏んでい
       けばよいか?

        19.身構えなくても融資は常識で成り立つ

        20.銀行に融資を申し込む際、二股ないし三股をかけるべきか?

       21.資金繰り不安定業種である建設工事業が、銀行借入をスムーズに
       すすめるには


       22.ビジネスローンには、どのように対応すればよいか


銀行との融資取引をスムーズに進めるために
    23.銀行員が貸したいと思う企業はどのような先か?

    24.銀行員が貸したくないと思う企業はどのような先か?

    25.銀行員が取引を続けたいと思う融資先はどのような先か?

    26.銀行員が取引を打ち切りたいと思う融資先はどのような先か?

    27.銀行との信頼関係は大切に

    28.銀行と日常の接触をどう保っていけばよいか

    29.銀行取引におけるタブー集


経営(事業)計画書・決算書
    30.経営計画書(事業計画書)の重要性について

    31.決算書をどう考えるか 〜 粉飾も含めて

    32.決算調整でいかに利益をだすか


銀行との融資取引で心得ておくべきこと
        33.企業として借入金の限度額をどのように考えておけばよいか

        34.銀行に債務超過といわれた場合、どうするか

        35.銀行融資の担保至上主義は終わった

        36.支店長が代わると、融資条件も変わる

        37.銀行の身勝手で非常識な要求に対抗する


銀行から融資を受けにくい時代のお役立ち情報
    38.銀行と融資交渉をする際に注意すること

         39.試算表は大事です

         40.銀行交渉における有力手段 〜 簡単でもいいので事業計画書
       (経営改善計画書)を提出しよう





テーマ 1. 「銀行の言いなりになっていませんか?」


 
あなたの会社にも、折に触れ銀行から様々な要求があるかと思います。

 たとえば、「金利を引き上げさせてほしい」「担保を追加してほしい」
 「保証人を追加してほしい」「今月は銀行の決算月なので、おカネを借りて
 もらえませんか」「投資信託を買ってくれませんか」などなど。

 そして、銀行からの要求の中には、非常識なもの、身勝手なものもけっこう
 あるんですよね。

 このような銀行からの要求に対して、顧客側の社長の中には、何とか銀行
 の要求を聞き入れようと真剣に悩み、必死の努力をされる方がいます。

 そういう方が銀行からの要求を断われない理由としては、次のようなことが
 あげられます。

 ○断わると、先々融資を申し込んだとき、応じてくれないのではないかと
  不安になるから

 ○経営者の性格によるもの 〜 人が好い、頼まれるとイヤと言えない、
                            甘い、シビアーでない 等々

 ○一行取引で比較できるものがないため、要求されたら、そうかと納得する


 銀行員の中には、この融資先は言いやすい先だ、あるいは取り組みやすい先
 だと認識すると(これは見方をかえると、甘く見られているとも言えるの
 のですが)、勢いで言い負かしてやろうと強引に言い寄ってくる人がいます
 ので、要注意です。
 


 さて、対策です。

 1.複数行取引

  一行取引は比較できるものがないため、どうしても不利です。

  たとえばある銀行から要求された、当方が不利になる融資条件について、
  他の取引行が何も言ってきていなければ、「その件については、△△銀行
  さんからは何の申し出もありませんけどねえ・・・」と反論できる一つの
  材料になります。


 2.要求の根拠を具体的に示してもらう

  上記1の例で、銀行から「御社は他社に比べ、リスクのわりに融資金利が
  低いので、来月から金利を0.5%引き上げさせてほしい」との要請が
  あったとします。

  この申し出内容では他社水準とか銀行のリスクとかはアバウトで、内容が
  よくわかりません。

  したがって、「今のお話ですと、他社水準とか御行のリスクとかは
  アバウトでよくわかりません。もっと具体的に数字で説明していただか
  ないと検討できません。」というように反論して、突き放しましょう。

  
 3.少しの勉強

  同じく上記2の融資金利引き上げ要求の場合ですが、「実質金利」(注)
  について知識があると、「貴行がおっしゃるように、たしかに現状の融資
  レートは〇〇%だが、当座預金の平均残高や外国為替の手数料収入なんかで
  実質金利は××%ぐらいになると思う。この点はどう評価してくれているの
  ですか?」と反論できます。

  このように、銀行員しか知らない用語での反論が顧客側からなされると、
  銀行員の心理として、「おっと今までみたいに簡単にはいかないぞ」と
  態度を変えてくるようになるものです。



 今回のテーマのまとめですが、
 
 銀行からの様々の要求に対しては、両極端は避けること。
 
 両極端とは、何でもかでも応諾しようと思うことと、逆に聞く耳を持たず、
 すべて拒否する姿勢で臨むことです。
 
 あまり大人げない態度をとっていると、銀行から相手にされなくなって
 しまいます。
  
 ギブアンドテイクの精神で、受け入れるべきものと、きっぱり拒絶すべき
 ものを色分けして、銀行と良好な取引関係を保っていくことが大切です。

 

 *(注)実質金利とは
     (貸出利息ー預金利息)÷(貸出残高ー預金残高)
     で算出される、銀行が貸出先の採算の良否をみる場合
     の一つの指標。
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テーマ  2. 「押しの強さと度胸だけでは銀行交渉力はアップしない」



 
「銀行交渉なんて、場数を踏んでいれば自然と身についてくるもんだ」と
 おっしゃる経営者の方を、たまにお見かけします。
 
 たしかに場数を踏んでいれば度胸はついてくるかもしれません。

 しかし、それだけのことに終わって、進歩がありません。

 銀行との融資交渉は、銀行とシロクロの決着をつけたり、銀行をやり負かす
 ための、一発勝負のその場かぎりの交渉ゴトではありません。
 
 自社の成長、あるいは衰退に伴ない、それに合わせて安定的に銀行から資金
 調達し、また少しでも自社に有利な融資条件を引き出すために継続するもの
 です。

 
 銀行借入については、平成11年の金融検査マニユアル制定以後、環境は激変
 しました。
 
 それまでは、「昔ながらの取引じゃないですか」とか「そこを何とかお願い
 します」といったような、お願い一点張りの情に訴える手法も、ある程度は
 通用した時代でした。

 しかし、金融検査マニユアル制定以後、それは通用しなくなってしまい
 ました。

 銀行融資においては、まず決算書ありきとなり、信用格付け・債務者区分と
 いった新しい概念が登場してきたわけです。


 
 さて、そういった現在における、銀行との融資交渉におけるより所はと
 いうと、それは、“敵を知り己を知らば、百戦危うからず”にあります。

 ただし注意点を申しますと、敵とは銀行のことですが、決して世間一般でいう
 敵対関係にある相手ではなく、自社と友好関係を保ちながら共存共栄をはかる
 良きパートナーとして認識します。

 
 敵(銀行)を知るとはどういうこと?

 バブル崩壊により、ほとんどの金融機関は痛い目に遭い、それぞれの台所事情
 には一律に推し測れないものがあります。

 貴社の取引銀行の個別事情、たとえば不良債権の処理はほぼ完了したのか、
 それとも他行に比べて、まだまだ重荷を背負っているのか、で融資に対する
 営業姿勢も随分と違ってきます。

 そういった情報は、マスコミ誌やホームページ等で入手できます。
 
 また、銀行という組織の特徴・特殊性や、交渉の直接の相手である銀行員の
 ものの考え方などを知っておくことで、交渉は有利に運べます。


 つぎに、己(自社)です。
 
 「自社についてなんて、何を今さら」と思われるかもしれませんが、これは
 銀行が融資先を評価する仕組みを学んで、それを自社にあてはめて、自社は
 取引銀行からどう評価されているのかを認識することをいいます。


 金融環境が様変わりした今日、銀行との融資交渉のやり方も変わってくる
 のが当然で、それなりの対応策が必要になります。

 しかし、必要最少限の知識を得るための、ちょっとした勉強と、企業経営に
 賭けるあなたの熱意・意欲があれば心配はご無用です。

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テーマ 3.「銀行交渉における自社の主張と落としどころ」



 
借入金利、担保や保証人など融資条件面での銀行との交渉においては、自社
 が有利になれば、その分銀行が不利になります。

 これは、立場を変えて銀行の方からみても、同様のことがいえます。

 借入する企業側としては、少しでも自社の有利になるようにとの思いから、
 ついつい強い調子で条件交渉を行ないがちになるものですが、当方の主張
 一点張りではなかなか交渉がまとまらないものです。


 交渉の相手方である銀行員はサラリーマンです。

 組織の一員として、立場々々で権限と責任を与えられています。

 したがいまして、上記のような融資条件を銀行と交渉する際は、相手の顔を
 立てるということも大切で、すなわち条件面の落としどころを心得ておいて、
 ある程度のところまで煮詰まれば、当方も譲歩することが肝要となります。

 
 また、そういった融資条件面の交渉を行なう際、自社の要求・主張が妥当な
 ものか否か、自社(ないし自分自身)を冷静に、第三者的にみることが
 できるかどうかもポイントになってきます。

 自社の要求・主張が、世間一般からみて妥当なものか、やや無理があるか、
 はたまた無茶なのかの判断をどう下すかということです。

 この判断基準は何でしょうか?

 それは、あなたが個人的にどなたかに、おカネを貸す場合を想定されれば
 良いのです。

 難しくはありません。「融資は常識で成り立つ」のです。

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テーマ 4. 「銀行交渉において銀行より優位に立つにはどうするか」


 銀行との交渉において銀行より優位に立つには、力関係による場合と、交渉
 のタイミングによる場合の二面があると思います。

 今回は前者の力関係による場合についてお話しして、交渉のタイミングに
 ついては後日にします。


 さて、銀行との交渉において、交渉相手である銀行が小さくみえる、
 すなわち見下ろすくらいの気分になれたら、しめたものですが、では、
 そういった気分になれるのは、どういう場合でしょうか?


 まず一つには、銀行が自社を、取引内容・業況・財務内容とも文句なしの
 優良先と認め、すり寄ってくる場合でしょう。

 この場合、その銀行としては自社との取引をより太く、より密接にしたい
 と思っているはずし、当然、他行のアプローチも激しいものがあると予想
 されます。

 そうなってきますと、各銀行が競って良い融資条件を持ってくるように
 なりますので、企業サイドとしましては非常に楽です。

 このような優良先になるのが理想で、目標とすべき姿ですが、一朝一夕には
 成しうるものではなく、簡単なことではありません。
 現実問題として、このような優良先はごく稀です。

 にもかかわらず、大局的にはこういった理想型を追求し、銀行に自社と取引
 を継続したい、継続しないと損だよと思わせることが、銀行に対して優位に
 立つ、まず一つ目のポイントです。


 二つ目は、取引関係でいうギブアンドテイクにおいて、銀行に対して貸しを
 たくさん作っておくことです。

 一つ例をあげれば、銀行の担当者が営業のノルマを消化させるために、折に
 触れお願い事をいってくることがありますが、その際むげに断わらず、
 できる範囲で協力しておくと(すなわち、貸しを作っておくと)、銀行の
 担当者もふつうの人間であるならば、多少なりとも精神的負担を感じ、
 「今度この先が何かいってきたら、申し出を聞かなければならないかな」と
 思うようになるものです。


 そして三つ目に、当メルマガの第3号で述べておりますが、「敵を知り、己
 を知らば百戦危うからず」です。ご参照ください。


 最後に局所的対策ですが、難しい交渉の時は、相手方の人数よりも多い人数
 で臨みましょう。たとえば、銀行側が2人なら当方は3人で。

 これは交渉内容以前の問題として、頭数が相手方より多ければ、気持ちの
 面で相手方より優位に立っているように感じるということです。

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テーマ 5. 「銀行交渉において銀行の融資決定の仕組みをどう読み取る
        か」



 
企業が銀行に融資を申し込みますと、銀行内部では融資稟議書という書類が
 担当者から上席者、さらに決裁権限者に回されて、貸すか貸さないかの正式
 決定がなされます。

 厳密に申しますと、稟議書作成前の段階で、支店内の融資事前協議会という
 ものがあり、支店長以下関係者が一同に集まって、顧客から申し込まれた
 融資案件の概略を協議して、進めるべきか断わるべきかの方向づけを行ない
 ます。

 その結果、ゴーサインのでたものが稟議書作成へと進むことになるわけです
 が、今回のお話は稟議書作成の時点からのものです。

 
 まず、銀行内部におきましては、職位や職務ごとに権限が定められていて、
 支店における最高権限者はもちろん支店長で、融資の権限についても支店長
 の場合は一企業に対する総融資金額はいくらまで、無担保の幅はいくらまで
 とか細かく定められています。

 そして、それを超える案件は銀行本部、たとえば審査部なりに送られ審査
 部長、さらに審査部長の権限を越えるものは担当役員ないし銀行の最高
 権限者である頭取の決裁を仰ぐことになります。



 以上の過程を具体的に示しますと、次のようになります。

 ○支店担当者   稟議書を起案(作成)する
          
                担当者の力量・能力が申込案件の可否を大きく左右する

                日頃から自社を正しく認識してもらうことが大事で、
                稟議書作成を早く進めてもらうため、資料提出などの
                要請があれば素早く対応し協力することが必要



 ○融資課長     担当者から回ってきた稟議書の細かいポイントを
                チェックする(融資条件や数字の整合性など)

          

 ○支店長       融資課長から上がってきた融資案件を、政策的見地から
                判断する

                自身の決裁で決定される案件数もけっこうあって、支店
                の最高責任者として、その責任は重い


 *以上が支店における稟議書の流れです。

  融資課長や支店長には、日常の要所々々で接触して、自社を知っておいて
  もらい、また良い印象を与えておくことが大事なポイントです。


 ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ 


  支店長の融資権限を超える融資案件は、本部(審査部)に送られ審査され
  ます。

 ○審査担当    支店から上がってきた融資案件を精査・審査する


 ○審査部長    本部案件の決裁権限者

               審査部長の権限を超えるものは、担当役員ないし頭取
               へと進むが、決裁する案件数では部長が一番多く、銀行
               全体の基幹部門の長として、その責任は重い


 *銀行本部のこういう部署の人とは、支店の顧客として接触することは
  ほとんどありません。


 ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ ─ 


 さて、以上のような銀行内部における融資案件の進む過程を、融資を申し
 込んだ顧客として、どのように認識しておけばよいでしょうか?

 一番避けたいのは、申し込みをしてからかなりの時間が経って、あげくの
 はて結論は断わられることです。

 そういった最悪の事態を招かないためにも、銀行内部の手続きに介入する
 わけではありませんが、顧客として銀行の内情を読み取り、必要な手立てを
 講じていく必要があるわけです。


 まず担当者の能力の見極めです。
 担当者が稟議書を作成して、上席者に回してくれないとコトが運ばない
 のです。

 しかし、どんなに努力しても融資業務になじまない担当者がいますし、
 中には握りグセのある人もいます。
 その辺の見極めは、担当者との日常の接触で十分できるはずですので、顧客
 として注意が必要です。

 運悪くそういった担当者にあたった場合、その上司を巻き込んで二人三脚
 体制を要求するなどの対策を考えなくてはなりません。


 担当者の問題は別にして、次に、融資の申し込みをしてからかなりの時間が
 経っているのに、結論をまだ銀行からいってこないといった場合、銀行に
 探りを入れてみる必要があります。

 融資の申込をする場合、「YESかNOの返事はいつ頃になりますか?」
 とか、「XXまでには返事をくださいね」といったやりとりを銀行員とする
 でしょうが、その時期が迫っているのに、あるいはもう過ぎているのに何も
 いって来ないとなると問題ありです。

 どの段階で稟議書が止まっているのかを探るわけですが、支店の事前協議会
 ではゴーサインがでていますので、支店長権限内の案件は問題なくすんなり
 といくでしょう。

 問題は本部稟議の場合です。
  支店としては本部へ稟議を上げ、何としても決裁をとろうと頑張る
  のですが、支店の意向と本部の見解がくい違う場がしばしばあります。
  (例えば、申込企業の赤字や担保不足などについて)

 そのくい違いを埋めるのに時間がかかるケースがあるのですが、申込企業
 としてはタイムリミットを考慮して別の対策を視野に入れていかなければ
 なりません。

 その判断は、顧客である企業がするしかないのです。

 支店の人にかけ合っても、「今、本部と折衝中です。もう少し時間がかかり
 ます」と言われるのが関の山で、とどのつまり、時間切れとなっても銀行は
 責任をとってはくれません。

 そのためにも、日頃の担当者をはじめとした銀行関係者との接触が大切に
 なってくるわけです。

 それによって、自社が銀行からどのように評価されているか、おおよそは
 かぎ分けることができるのです。

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テーマ 6. 「銀行との適切な交渉のタイミング」


 
銀行との交渉において銀行より優位に立つには、力関係による場合と、交渉
 のタイミングによる場合の二面があり、そのうちの力関係による場合のお話
 は、3月12日配信の第5号で行ないました。

 今回はもう一つの、交渉のタイミングを上手くとらえて銀行より優位に立つ
 場合のお話です。

 銀行との交渉には、当方から何らかの申し出をして交渉する場合と、逆に
 銀行からの何らかの申し出を受けて立つ場合の、二通りがあります。

 いずれの場合も、キャッチボールにたとえると、ボールは常に相手に投げ
 返しておくことによって相手の出方を待つというように、相手をリードする
 立場に立っておくことが大切です。

 そこのところを間違って、すなわち交渉のタイミングを見誤って、相手
 (銀行)に主導権をとられると、それ以後はあらゆることが後手後手に
 まわり、交渉面では不利な立場に立ってしまうことになります。


 銀行との交渉においては、“交渉の展開(ストーリー)を頭に描くことが
 できるか”が大きなポイントになります。
 
 これがありますと、個別交渉毎の節目・ポイントがあらかじめ認識できて
 いますので、余裕をもって交渉に臨めます。

 余裕がある分、相手より優位に立つことができ、当然、勝算も高くなるわけ
 ですね。


 そこで、上述しました二通りのケース
  (1)当方から何らかの申し出をして交渉する場合
  (2)銀行から何らかの申し出を受けて立つ場合
 
 に具体例をあてはめて、ストーリーを描き、交渉の進展予想、節目・ポイント
 を探ってみましょう。

 
 (1)当方から銀行に対して、金利の引き下げ要求をする場合

  1.銀行に金利を引き下げてくれるよう申し出る。
    「○○銀行さん、△△銀行さんともに2.5%ですが、御行だけは
     3.0%です。3行とも取引内容はほぼ同じです。

     御行も0.5ポイント下げていただき。2.5%にしていただけ
     ませんか。

     ご返事をお待ちしています。できましたら今月末までにお願い
     します。」
  
   
  2.上記1.の申し出に対し、銀行の反応は二通り考えられます。
     イ.まったく聞く耳をもたない、拒否の姿勢
     ロ.検討してみましょうという、前向きの姿勢


  3.再度の交渉を行います。それに対して、
     イの場合.
      銀行の態度はかわらず、引き下げ要求には応じられないという結論

     ロの場合.
      段階的に引き下げていきます、という一歩前進の回答
   

  4.当方の作戦を再検討。
     イの場合.
      金利引下げを申し入れた銀行との取引を解消しても、自社の
       銀行取引が成り立っていくかを見定めて、それができるならば
      取引解消も辞さないという姿勢を示し、引き下げを申し入れた
      銀行の最終回答を促す。

     ロの場合.
              段階的に引き下げる金利の幅が納得できるものか検討してみる。
        納得いかない場合は、銀行に再考を促す。



 (2)銀行から当方に対して、金利の引き上げ要求がある場合 

  1.ある日、銀行から金利を引き上げさせてほしいと要求がある。
    「現在、御社の融資金利は2.5%ですが、・・・・の理由で、
    来月から3.0%に引き上げさせてもらいたいのですが」


  2.その場では、反論すべきことはしておくとしても、断定的な即答は
    せず、検討する旨を伝えるにとどめる。


  3.銀行からの要求内容をじっくり検討する。
    やむを得ない要求か?
    それとも身勝手な要求か?


  4.当方の検討結果を銀行に伝える。
    この例では、要求のあった0.5ポイントは応諾できないが、 
    0.25であれば引き上げに応じるとします。


  5.当方の回答を受けた銀行の態度は、次のように二通り考えられます。
         イ.0.25アップでは納得できない。
      あくまでも0.50にこだわり、当方の再考を促す。

         ロ.素直に喜ばないが、「まあ、よし!」として、決着する。


  6.イの場合、当方の検討結果として、0.25がギリギリの線であれば、
    取引解消も辞さないという強い態度を崩さないでおく。


  7.日をおいて銀行の方から、「では、0.25ポイントの引き上げで
    お願いします。」といってくる。

    おおよその決着は、以上のようになると思いますが、最悪の場合、
    銀行から「どうしても当行の要求をお聞き入れいただけないようです
    ので、次回からの融資はちょっと考えさせてもらいます。」
 
    というような回答があるかもしれないと想定しておきます。


 
 まあ以上のように、ストーリーの展開は様々に、また際限なく描けるのです
  が、当メルマガの第3号でも述べましたように、敵(銀行)を知り、己
  (自社)を知っていれば、ストーリーの先読み能力も徐々についてきます。

 受けたボールは持ちすぎず、タイミングよく相手に投げ返しておく。

 あわせて、敵(銀行)を知り、己(自社)を知るように努力しましょう。

                                                ↑ テーマの一覧に戻る


テーマ 7. 「銀 行への返済が滞ってしまい、銀行から呼び出しがきた」


 
企業経営をされていますと、何らかの理由で銀行への返済が約定どおりに
 できないときがあります。

 約定日が過ぎて、こちらから銀行へ何の連絡もしないでいると、銀行の方
 からまず「至急入金してください」と督促の電話が入ります。

 それでも何のアクションも起こさないでいると、再度銀行から今度はきつめ
 の入金督促の電話か担当者の訪問があって、「一度、銀行の窓口の方に説明
 に来てくれますか」というふうになります。

 銀行サイドでは、顧客の正常返済は当り前の話で、延滞先が発生すると、
 「面倒な先がまた発生してしまったな」といった憂うつな気分で、融資金の
 回収マニュアルに沿って手続きを進めていくことになります。

 延滞が長引くと、銀行の支店では延滞発生の理由や延滞解消の目途・対策
 などを記した「問題債権発生報告書」といったような稟議書報告が、本部に
 対して必要になってきます。

 銀行関係者の心理は、一刻も早くカタをつけたいのに、顧客の方からは何の
 リアクションもないというのは、いらだちを増すばかりなのです。


 さて、顧客側である企業の対策です。

 色々な要因があったにせよ、上記のような状態になってしまったとして、
 逃げていては事態は好転しませんし、問題は解決しないのです。

 ここは勇気をだして、申し訳ないという気持ちで銀行の協力を仰ぐしか
 ありません。

 延滞発生は、理屈抜きで企業にとっては弱みです。

 こういう場合、顧客側企業が陥る悪しき習性として、自己を正当化する・
 自己弁護する・開き直るとかといった態度をとりがちですが、まずこの点に
 十分注意しましょう。印象が悪くなるばかりです。

 そして、延滞解消の目途を自社なりに立ててみましょう。
 
 延滞が発生したということは、資金が不足している状態になっているわけ
 ですが、その理由として、

   ・業況がジリ貧傾向にある
   ・売掛先で焦げつきが発生した
   ・銀行への月間返済額が過大である

 等々があるかと思いますが、原因を見定めた上で、
 
   ・資金不足の状態は一時的なものか、それとも長期化する見通しか
   ・業況の建て直しは可能か
   ・事業の縮小等、抜本的措置をとらなければならないか

 これらについて、数字で話ができるレベルまで自社なりに検討した結果を
 もって、銀行に出向くようにしましょう。

 不十分でもいいのです。しかし、まちがっても手ぶらでは出向かわない
 ように。
 「この客は一体なにを考えているんだ?」となって、最悪です。

 延滞の解消に向けては、銀行の協力を仰がなければなりません。
 
 その際、銀行員に「この先はいま窮地に陥っているが、何とか助けて
 あげたいな」と思わせるものは、経営者の誠実さ・一生懸命さです。

 銀行は、顧客側企業にとって敵ではありません。パートナーなんです。
 早め早めの相談を持ちかけましょう。

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テーマ 8. 「社長の性格が銀行の融資審査を左右する」


 「中小企業は社長次第だ」とよくいわれますが、銀行融資においても融資先
 企業の社長に対する評価のウエイトには、非常に大きなものがあります。

 銀行は、融資先企業の社長を経営能力・識見・人物面などで、総合的に評価
 しているわけですが、それらのベースを成すものとして、社長の性格は大き
 くものをいっています。

 社長の性格が良くないのに、会社の業績が良いとか企業内容が良い、と
 いったケースもまれにはあるでしょうが、ふつう人間の資質や能力には
 その人の性格が大きく影響しているのではないでしょうか。

 
 では、銀行融資の審査結果を良くする社長の性格と、逆に悪くする社長の
 性格とはどのようなものか、具体的に挙げてみましょう。

 ○銀行の融資審査結果を良くする社長の性格
   誠実  真面目  明るい  律儀  正直  責任感が強い  
   一生懸命  几帳面  約束は守る  熱意がある    

 ○銀行の融資審査結果を悪くする社長の性格
   暗い  ルーズ  裏表がある  責任転嫁する  無責任
   不熱心

 以上がすべてではありませんが、おおよそはご理解いただけると思います。


 銀行の融資審査において、可決か否決かの分岐点で迷った場合、最後の
 決め手は社長となります。

 企業が窮地に陥った場合でも、また自行との今後の融資取引を支障なく
 継続する上でも、「あの社長なら大丈夫だろう」と判断するか、あるいは
 「あの社長だし不安が残るなあ」と判断するかで、銀行の最後の結論は
 分かれるわけです。

 銀行はヒトをみてカネを貸します。心したいところですね。

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テーマ 9. 「資金繰りと銀行交渉ができる人材がいない」


 小さな会社にとって、経理責任者の確保は頭の痛い問題です。

 特に社員が十数名くらいになりますと、社長ないし社長夫人が経理責任者
 兼務で「資金繰りや銀行交渉」を行なうのは、少々荷が重くなってくるの
  ではないでしょうか。

 ご夫婦で経営されているくらいの規模であれば、何とか回っていくので
 しょうが、社員数が10名を超えるくらいになってきますと、もう会社と
 いうレベルになってきますよね。

 そうなってきますと、社長にはやらなければならない仕事が多すぎて手が
 回らなくなってきますし、もともと過去に資金繰りや銀行交渉の実務経験が
 ない経営者の方がほとんどですから、会社の規模が大きくなってくるに
 つれ、その負担は重くのしかかってきます。

 また社長夫人が経理を担当されているとして、経営に波風が立たない状態、
 あるいは、こじんまりとした会社規模であれば、資金繰りの計画も十分
 こなすことが可能でしょう。

 しかし、拡大途上にある会社、あるいは苦境時期にある会社などの場合、
 当面の資金繰り予想を的確に立て、銀行との交渉も、必要とあれば素早く
 アクションを起こさなければなりません。

 また、銀行側から提出資料等で色々と注文がついてくることがでてきます。
 
 たとえば事業計画書であったり、はたまた経営改善計画書であったりとか、
 その他必要に応じて色々といってきます。

 社長夫人やベテランの経理担当の方は、経営計数の実績把握・集計は完全に
 こなされるでしょうが、計画数値となると、ちょっと手に負えないことに
 なってくるのではないでしょうか。

 このような状態の会社が打たれる手立てでよくあるのが、顧問会計事務所
 への資料作成依頼です。

 しかし、私の経験から申しますと、このようなケースで会計事務所が作成
 された書類は、実態とかけ離れた形だけのものが多かったという印象が
 あります。
 (そうでない、しっかりされた会計事務所さんもいらっしゃいますので一概
 には言えないのですが。)

 顧問会計事務所へ依頼される場合の、もう一つの問題点は銀行との折衝
 です。

 これは自社で対応せざるをえないわけですが、経営者の方の多くがこの点に
 頭を悩まされるのではないでしょうか。

 「有能な経理責任者を採用したいが、おカネの話を任すのだから信頼の
 おける人物でなければ困るし、またフルタイムで雇うとなると社会保険料等
 も含めて人件費の負担も多くなるしなあ・・・・・」
 といったところが社長の本音ではないでしょうか。


 そこで手前味噌になりますが、このような状態の会社様は、私どものような
 外部の銀行・資金繰り専門のコンサルタントを契約経理部長として活用する
 ことを一度検討されてはいかがでしょうか。

 一概にいえませんが、銀行員出身であればおカネに対する倫理感は、一般の
 人よりはあると思いますし、正社員の採用に比べはるかに低コストで業務を
 請け負えます。
 
 是非ご検討ください。

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テーマ 10. 「資金繰り表を作成しない小さな会社が多いわけ」

 
 
銀行員時代の顧客もそうでしたし、現在、コンサルタントとして資金繰りの
 相談を受けていても、小さな会社の多くは「資金繰り表」を作成されて
 いません。

 その資金繰り表とは、なにも見ばえのいいフォームででき上がったものを
 いっているのではありません。

 手書きの鉛筆書きでいいのです。

 要は、最低3ヶ月先(できればそれ以上の先まで)までの資金繰り予測が
 紙の上で立てられているのかどうかということです。

 銀行員時代、融資の申し込みを受けた顧客に資金繰り表の提出を要請した
 ところ、作成していないとのことで、やむなく必要に迫られ、顧客から数字
 を聞き取って作成したこともありました。

 その際、「資金繰り表も作らないで、よくやっているよなあ」と思ったもの
 でした。

 そういった、資金繰り表を作成していない経営者の言い分としては、次の
 ようなことが挙げられるでしょう。

 「そんな先のことは、どうなるかわからない、予測不可能だし予測しても
  意味がない」

 「永年それでやってこれたし、永年の自分のカンで大丈夫」

 「何かあっても、その時はその時でなんとかなるだろう」

 「数字を目にするのが怖い」

 「あらためて資金繰り表を作成するなんて、忙しくて面倒くさい」

 といったようなものではないでしょうか。


 では、なぜ最低3ヶ月先までの資金繰り表が必要なのでしょうか?

 経営者の方は、「資金に詰まれば会社は終わりだ」との思いがあります
 から、おカネの計算は常に頭の中でされているでしょうが、頭の中のこと
 だけに、せいぜい次月の入出金程度が限度でしょう。

 それ以上先の予測は無理でしょうし、次月の数字ですらアバウトで不確か
 なのではないでしょうか。


 一つまちがえば命取りのおカネのことなのです。

 目で確認することの大切さは、十分あるのではないでしょうか。

 
 もう一点。

 小さい会社ほど資金力は乏しいものです。ちょっとした入金の遅れや支払の
 先行が大きく影響を及ぼしてくる場合もあります。

 必要なときにカネがない、といった状況も十分考えられるわけです。

 そういった不測の事態を避けるうえからも、できるだけ先の時点までの予測
 がなされていれば、早く手が打てます。

 土壇場にきて急きょアクションを起こすのと、時間的な余裕をもって
 アクションを起こすのでは、効果は目にみえています。

 早め早めの対応をして、万全を期すことが何より大切です。

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テーマ 11.  「資金繰り表の作成が苦手な人が多いわけ」

 
 「資金繰り表が重要なのはよく解るが、作るのはどうも苦手で」と
 おっしゃる方が、よくおられます。

 今回は、その原因と対策についてお話ししていきます。

 まず1つ目にあげられる原因は、[現金ベースに頭が切りかわっていない]
 という点です。
 
 通常、私たちの頭の中には
              いくらの売上があって
              いくらの仕入があって
              そして経費がいくらかかって
              その結果、利益はいくらであったか

 というような計算が常にありますよね。

 そして、そこでは現金とツケが交じり合っています。

 資金繰り表は、利益の計算表ではありません。

 それは銀行の当座預金等の流動性預金も含めて、現金の出入を計算するもの
 ですので、
       ツケで売った、あるいは買った
       ツケを現金で回収した、あるいは現金で支払った

 をどう計算するかがポイントになってきます。

 具体的には
              売掛金・受取手形
              買掛金・支払手形
              未払金(仕入以外のツケでの購入)
              預り金(例:給料からの税金などの天引き)

 大ざっぱにいって、以上のようなものが、いつ現金化されるかを資金繰り表
 の上にどう反映していくかがポイントになります。

 これは慣れもあります。

 頭の切りかえを素早くして、習熟していってください。


 原因の2つ目は、おカネのことだから不足すれば大変だとの思いから、
 [必要以上に身構える]ことです。

 以前、経理担当の方で自分が立てた資金繰り予想が大きく狂って、後日、
 経営者に叱られることを恐れ、あらかじめ必要以上に資金計画をからく見積
 もるという方がおられました。

 この人の考え方では、資金繰り実績が当初の計画より増えていればいいんだ
 ということになりますが、これはまちがっています。

 資金繰り計画の目的は、まず予測される実態をより正確につかむことです。
 
 その上で、対策をどう講じていくかということになるわけですが、この経理
 担当者の方の場合、実態把握をねじ曲げていることになります。

 別の見方をすれば、不器用な方なのかもしれませんが、そう難しく考えず、
 リラックスして取り組めば案外と簡単なものなのです。

 
 原因の3つ目は、[資金繰り計画の基本ができていない]ことです。

 資金繰り計画では、売上・仕入計画が柱、基本になります。

 これは経理部門では立てられない計画で、営業や仕入担当の部署から情報を
 入手することになります。

 したがって、これらの部署とのコミュニケーションを良くして、必要に
 応じて、あるいは定期的に計画数値を得るようにしなければならないのです
 が、それができない人がいます。

 手抜き、自分の殻に閉じこもる、コミュニケーションが保てない等いろいろ
 と原因があるようですが、こういった人達は、自分のヤマカンで計画数値を
 作ってしまいます。

 その結果は、もう明白ですよね。お話にならないわけです。

 これに該当するような人は、ごく基本的な職務遂行能力に欠けるともいえる
 わけで、適性の見きわめが必要かもしれません。


 最後に、資金繰り計画においては、計画数値算出の根拠・計算式を自分なり
 に明確にしておくことが大切です。

 たとえば、
     全販売先からの売掛金の回収における現金と手形の比率が、以前は
     3対7であったが、直近では5対5になってきている

     経費削減運動の効果がでてきて、今期に入って人件費を除いた経費
     の支出は前期比10%の削減ができている

 といったことが現実化しているのであれば、計画数値の見積もりに明確に
 織り込んでおくことです。

 それをせず、単なる過去の延長線上で、いい加減な予測数値を入れていると
 実態とはかけ離れた計画になってしまいますので、ご注意ください。
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テーマ 12.  「小さな会社では日繰り表が大事です」

 
 
資金繰りは一日たりとも休むことはできませんし、待ったなしです。

 ふつう資金繰り表といえば、月単位のものをいいますが、会社の規模が
 小さいところでは、資金の管理を月単位よりもっと細かくして、日次単位
 でやっていかなければなりません。

 小さな会社は資金力に余裕がなく、ギリギリの線で日々のおカネを回して
 いるところが多いと思います。

 そういった状態の下では、一つ予定が狂うと、その影響力には大きなものが
 でてきます。

 資金力に余裕がないと、自社の支払日にあるべきカネがない、といったこと
 が起こる可能性が比較的高くなってくるわけです。


 たとえば、自社の支払日が毎月15日で、その支払原資に、ある得意先から
 毎月10日に振込まれてくる入金をあてこんでいるとします。

(こういったおカネの動きは、月単位の資金繰り表には表れてきません。)
 
 その10日の入金予定が、得意先の事情で20日になるとなった場合、
 わずか10日間の時間のズレとはいうものの、15日の自社の支払日には
 支払うべきカネがないという状態になります。

 したがって、至急の資金対策が必要になってきます。

 日数も限られてきますので、対策も一つに絞ってはおられず、いくつかを
 同時進行で進めていくことになります。

 
 以上の例のように、小さな会社の場合、資金面ではちょっとした異変でも
 大きな影響力をもってくるため、きめ細かい管理と資料が必要になってきま
 す。

 管理ツールとしての日繰り表は、きわめてシンプルです。

 向こう1ヶ月程度の1日ごとの
        ・入金額と出金額、およびその内訳
        ・それに伴なう現金と銀行別の残高(当座・普通預金等)、
 についてまず予定を記入していきます。

 そして日々実績を記入し、また予定で修正できるものは修正して、資金不足
 を発生させないように管理していくわけです。

 
 さて、今回のお話は、日々の資金繰りについてでした。

 月単位の資金繰り計画を立てて、数ヶ月先に資金不足の発生が予想される
 場合は、比較的余裕をもって対策をこうじていけると思いますが、1ヶ月
 以内の資金不足の予想となると余裕はありませんし、打てる対策も限られ
 てきます。

 あなたの会社のレベルがそこそこであったとしても、今回のテーマである
 日繰りは資金繰りの基本ですので、一つの方法として実行されることを
 おすすめします。
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テーマ13.  「小さな会社で銀行に頼らない資金繰りは可能か?」

 

 
小さな会社の多くは、資本金1,000万円以下の小資本でスタートされて
 いるのではないでしょうか。

 そして業歴を重ね、企業規模が拡大してくると、必要資本も増えてくるわけ
 ですが、それをどのように調達するかが、今回のテーマです。

 たとえば、つぎのようなケースを設定してみましょう。

      売掛債権(売掛金+受取手形)    1,000万
      棚卸在庫                       500万
      買掛債務(買掛金+支払手形)      700万

 このケースの場合、800万の運転資金が必要になってきます。
 (算式は、1,000万+500万ー700万)

 
 この800万の運転資金をどうやって調達するかですが、考えられる
 方法は3つあります。

 まず1つ目は、銀行借入です。
 この運転資金は、企業内容が健全であれば、「正常な運転資金」として
 銀行は継続的に支援してくれる資金使途です。

 借入の方法は、手形借入で期間は長くて1年のいわゆるコロガシか、長期運
 転資金として期間は3〜5年で、毎月徐々に返済していくという方法です。

 2つ目は、仕入先に負担を強いる方法です。
 数字で言いますと、買掛金の支払日を1ヶ月ずらしたり、支払手形のサイト
 をたとえば3ヶ月であったものを4ヶ月にするなどして、買掛債務の金額を
 現在の700万から800万増やして1,500万にするのです。

 しかし現実問題として、これには限界があります。
 大事な得意先を離したくないと判断すれば、多少の無理なら仕入先も聞いて
 くれるでしょうが、要求の度が過ぎると、仕入先も不安を感じて、応じては
 くれなくなるでしょう。

 場合によっては、取引解消に至ることにもなりかねません。
 これでは、元も子もなくなります。

 3つ目は、自己資本による調達です。
 これは、銀行借入や仕入先への依存などの負債に頼らず、利益の蓄積を図る
 か増資によって必要資金を調達する方法です。

 このうち、増資については、小さな会社の場合、社長の身内以外から調達
 するのは現実的に困難だと思います。

 ならば利益の蓄積となるわけです。
 これが資金調達の理想形で、外部に頼らず、自力で稼いだ儲けで必要資金を
 賄っていければ言うことなしです。
 ところが、そううまくいかないのが世の中ですよね。


 さてテーマにもどって、小さな会社の場合、現実的に資金繰りは程度
 の差はあっても銀行に頼らざるをえないのではないでしょうか。

 ただし、その際、注意しなければならないのが、借入金の限度ということ
 です。大ざっぱに申しまして、

  ・長・短期借入金の合計額が月商の3ヶ月以下(製造業では6ヶ月以下)
  ・            〃          総資本の50%以下
  ・税引き後当期利益+減価償却費 > 年間の長期借入金返済額

 などの基準を超えないことです。

 もっとも、これらの基準はあくまでも目安で、現実はこれらの基準を超え
 られている企業が大多数でしょう。

 しかし厳しいことを申しますが、これらの基準を超えるようだと事業の継続
 か廃業かを検討するぐらいのシビアーさが必要だと思います。

 「足りなければ、借りないと仕方がないだろう」と、無理に自分に言い聞か
 せて、開き直るのはやめましょう。
 
 ふと気がつくと、借金が膨らみすぎて身動きできない状態に陥っていた
 というケースはよくあることです。

 要は、程よいバランス感覚が必要なのです。

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テーマ14.  「2期連続で赤字決算、資金繰りで頭が痛い」


 
 赤字の原因には、一過性の原因によるものと慢性的な赤字体質の2つが
 あります。

 まず、一過性の原因の代表例としては、固定資産の売却損があげられます。

 たとえば、事業活動にほとんど貢献していない遊休不動産を売却した際、
 簿価が1,000万円であるのに、売却価格が600万円であったため、
 400万円の売却損が発生したというような場合です。

 経常利益段階までは黒字であったが、特別損失としてこのような売却損が
 発生したため最終利益も赤字となった、というようなケースでは、銀行の
 評価は一過性の赤字計上として、まだ好意的です。

 しかし、このような一過性の赤字が2期連続で発生するのは、ごく稀な
 ことでしょう。


 問題は、自社が慢性的な赤字体質に陥っているかどうかということです。

 まず営業利益段階で赤字の場合、事業経営の根幹が痛んでいるので、症状は
 重症です。

 売上アップ、製品・商品の原価低減、経費の削減などについて具体的対策を
 大至急、徹底的に練り上げる必要があります。

 そして、これがなかなかでてこないようならば、事業の縮小・分離などを
 含めて事業の存続を根本的に考える必要があります。

 (もっとも事業歴の長い経営者の方なら、この辺の自社業績の傾向は数字を
 見るまでもなく、肌身で感じ取っておられるのではないでしょうか。)

 いずれにしても、この危機的状況を抜け出すために、全社一丸となって
 背水の陣で闘わなければなりません。


 つぎに、営業利益段階では黒字なのですが、経常利益で赤字の場合について
 です。
 
 これについては、借入金が過大か、もしくは借入金利が高すぎる、という
 ような要因が考えられます。

 金利負担を少しでも軽くするため、銀行に対して、
 「当社は、本業ではお蔭さまで儲かっています。つきましては金利引下げを
 ご検討いただき、経常利益の黒字化にご協力願えないでしょうか」
 と交渉しましょう。

 こういう申し出があると、銀行はプレッシャーを感じます。


 さて、つぎに2期連続赤字決算の場合、銀行の対応はどのようになるので
 しょうか?

 ふつう2期連続で赤字ですと、信用格付け・債務者区分ともにランクダウン
 して、債務者区分は、1期目赤字でまだ正常先であれば、2期目は要注意先
 になります。

 そうなりますと、銀行の対応は当然厳しくなることが予想され、いままで
 どおりの支援を期待できなくなります。

 したがって、このランクダウンを何としても阻止するために、先に述べまし
 た経営の再建策を練り上げた「経営改善計画書」を作成して銀行に説明し、
 ランクダウンには及ばないと納得してもらわなければなりません。

 その際、つぎのような点にご留意ください。

 1.債務超過に陥っていないか
   要は赤字の幅はどうかということで、大幅赤字で債務超過になると、
   債務者区分は最悪、破たん懸念先になりかねません。

   逆に2期とも赤字幅が小さかった場合、経営再建の難易度は比較的容易
   だということを銀行にアピールしましょう。

 2.減価償却前利益はどうか
   これが黒字だとまだ救われます。

 3.2期のうち、一過性の赤字原因に該当する期はあるか
   先に述べましたように、一過性の赤字原因については、銀行の評価は
   まだ好意的です。

 4.金融検査マニュアル(別冊)の27事例に該当するものはないか
   27の事例のうちに自社が該当しそうなものがあれば、総合的判断を
   してくれるよう銀行にアピールしましょう。

 5.リスケジュールの申し出
   営業利益段階では黒字で、銀行への返済負担が大きい場合、そして
   経営改善の実現性が高いと確信がもてるなら、返済を一定期間猶予
   してくれるよう銀行に要請しましょう。

   ただし、ご存知のように、これは返済の免除ではなく、時間を貸して
   もらうということですので、念のため。


 一過性の原因ではなく、2期連続赤字だということは、

 ・経営のあり方、事業の存続を根本的に見直す必要がある
 ・返済原資がでてこないのだから、銀行の対応は厳しくなる

 ということをよく認識して、改善に向け必死に対応しましょう。

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テーマ15.  メイン銀行は必要か?

 
 「御社のメインバンクはどちらの銀行さんですか?」と聞かれたとき、あな
 たはどのようにお答えになりますか?

 たいていは、取引銀行のうちで融資シェアが一番高い銀行の名前をおっしゃ
 るのではないかと思いますが、今回のテーマに入る前に、まずメイン銀行と
 はどのような銀行を指すのかを考えてみましょう。

 世間一般では従来、メイン銀行の定義として言われていたのは、先に述べま
 した融資シェアが一番高いということ以外に、

  イ.取引年数が一番旧い銀行
  ロ.苦しいときに助けてくれる銀行
  ハ.イザというとき頼りになる銀行

 などがあるかと思います。

 私の考えは、ロとハで、両者は表現は違いますが、内容的には同じです。

 
 ところで、平成11年に金融検査マニュアルが制定されて以来、メイン銀行
 は不要だとか言われたりしてきました。

 というのは、同マニュアルにより信用格付け・債務者区分といった新しい概
 念が登場してきて決算書重視・キャッシュフロー重視の審査体系に変わり、
 それまでの銀行取引の主流であった

    「永い付き合いなんだから、何とか助けてください」

              ↓

    「ご期待にそえるよう、何とか頑張ってみましょう」

 といった、情に訴える、あるいはお願い一点張り的な関係は意味をなさなく
 なったからだというのが、その根拠です。

 たしかに、融資先企業の業績が悪化してきた場合、メインバンクとはいえ、
 マニュアル順守の観点から、面倒をみきれない場合がでてきます。

 したがって、企業側として、いつまでも過去の旧き良き時代を引きずらず、
 時代に見合った銀行取引を模索するべきだと思います。


 そこで本題です。

 今の時代、メイン銀行は必要なのでしょうか、それとも不要になったのでし
 ょうか。

 私なりの結論を申し上げれば、中小企業の資金調達面で一番のニーズは、
 「安定的に資金調達を受けること」ですが、そのためには、メイン銀行は
 必要だと思います。

 融資先企業の業績が悪くなってきた場合、お荷物だと感じるのはメイン銀行
 であってもなくても、それは同じだと思います。

 自社にメイン銀行がなく、それまで借りやすい銀行から都度、借入をしてき
 て、業績悪化に陥ってどこかの銀行に融資を申し込んだ場合、その銀行は、
 「今回の融資はよそ(他行)でやってもらってくださいませんか」とか言っ
 て、逃げやすい状態にあると言えます。

 メイン銀行がない場合、銀行は横並び状態にあるわけですから、自行で受け
 なくても他行でやってもらえばいいではないか、という考えです。


 この融資申し込みがメイン銀行であった場合、どうでしょうか。

 時代が変わり、企業の状態も良くないというのであれば、はっきり言って
 融資の申し込みは受けたくはないでしょう。

 しかし、いやしくもメインと位置づけられている銀行です。

 多少なりともメインとしてのプライドもあるでしょうし、自行の立場の認識
 もあるでしょう。

 横並び状態にある銀行と同じような対応はしないはずです。


 ここで、立場を替えて、銀行はメイン銀行になることをどのように考えてい
 るのか、を申し上げますと、

 銀行の本音は、

「良い企業のメイン銀行ならなりたい、歓迎する
「しかし良くない企業のメインなら願い下げだ、できたら降りたい」

 といったところでしょう。

 メイン銀行といっても銀行と特別な契約、たとえば「メイン銀行契約」とか
 を結ぶようなことはないのであって、形にあらわれない、いわゆる「相思相
 愛」的な関係です。

 以上より、融資先企業として、メイン銀行と定めた銀行にどのような対応を
 していけばよいのか、と申しますと

 ・銀行と良好な関係を築く努力が必要で
 ・銀行に嫌われないこと
 
 です。

 もっと具体的に言いますと、良きパートナーとして、

 ・業績面、資金ニーズ面、その他企業活動における重要事項など
  自社情報を積極的に開示すること

 ・ギブアンドテイクの精神で、良識の範囲内で銀行の営業面で協力できるも
  のは協力する
 
 というようなことになろうかと思います。



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テーマ16.   「メイン銀行の態度変化にどう対処するか?



 
bP5では、「メイン銀行は必要か?」というテーマについて、結論は必要だ
 ということ、またそのための企業側の努力について、種々述べております。

 さて、今回のテーマは、自社のメイン銀行から

  「御社へのご支援がこれ以上できなくなりました」
  「今回の融資申し込みについては、他行さんでやってもらってください」
  「今後、メイン銀行としてのご支援は、できなくなりました」

 というような、後向きで取引の後退をにおわす、あるいは取引解消をすら視
 野に入れた申し入れが自社になされた場合についてです。

 その理由は、顧客企業側の、たとえば業績不振や返済の不履行などが、また
 銀行側の事情によるものとすれば、たとえばメガバンクであれば、中小零細
 企業には自行の効率化を進める上で今後対応できなくなったとか、取引をし
 ていた支店が統廃合により無くなってしまう、というような事情が考えられ
 ます。

 いずれにしても、企業サイドにすれば、まったくその気がなくても、メイン
 銀行からそのような申し入れを受ける場合がでてくるわけです。


 メイン銀行といっても、そのための特別な契約があるわけではなく、企業と
 銀行間の相対の合意をさしているわけで、その関係はある意味もろいもので
 もあるわけです。

 考えようによっては、これは男女間の付きあいにも似たところがあって、相
 手方にすればそれなりの理由があって、要は相手から愛想をつかされた、相
 思相愛でなくなったということです。

 となれば、相手の心変わりを責めて、こちらに気を向けさせようとしても、
 無理があります。

 過去のうまくいっていた時代を想いだして未練がましく、

  「そうおっしゃらずに、永年の付き合いじゃないですか」
  「御行をメイン銀行と信じて今までやってきたのに、あんまりじゃ
   ないですか」

 といったようなことを言ってもみじめなだけです。

 金融検査マニュアルの制定以後、銀行の価値観は変わり、ドライになって
 「お荷物はご免こうむる」といった感覚になっている面があるわけです。

 
 さて、こういった事態に至った場合、企業サイドとしてどう対処していけば
 よいのでしょうか。

 結論としては、企業側も発想・価値観を変え、過去の良かった時代の想いを
 捨て去り、新しい銀行取引を探ることです。

 たとえば

   ・自社を正当に評価してくれる銀行
   ・自社の身の丈(企業規模など)に合った銀行
   ・社風・行風が合いそうな銀行

 などの観点から、現状の取引行の中から、あるいは未取引であっても対象先
 はたくさんありますので、模索することです。

 要は、

 ・メイン銀行はないよりはあった方がよい
 ・また、その関係は強固で盤石なものではなく、もろいものである

 というように認識して、過度の依存心はもたないことです。


 今回のテーマは、よくある話として、前向きに対処していきましょう。


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テーマ17.  「取引銀行の数は一行でよいのか、それとも複数行が必要
                       か?



 
あなたの会社が取引している銀行の数は一行ですか、それとも複数ですか?

 結論を先に申し上げれば、取引銀行の数は一行よりも複数行ある方が良いと
 言えます。

 旧き良き時代、顧客企業の社長の中には、取引行に対して、「ウチは御行一
 本で、決して浮気はしませんので、よろしくお願いしますよ」とかおっしゃ
 る人もいました。

 また、銀行員の中には融資稟議書に、「当行ファンの当行一行取引先であり
 ぜひ支援したい」なんて書く人もいました。
 
 実は、私もそのように書いた記憶があります。

 この時代は、金融環境も安定しており、浪花節的な一行取引が美徳とされた
 時分でもあったのです。

 しかし時代も移って、今の時代、一行取引は決して勧められるものではあり
 ません。

 一行取引のデメリットを挙げてみますと、つぎのようになります。

 ○銀行の都合や事情で貸せないことがある

  金融検査マニュアルの制定以後、マニュアル順守にのっとって銀行の価値
  観は変わり、またドライになって心情的には融資に応じたいのですが、銀
  行の都合や事情でそれが許されない、すなわち融資に応じられないという
  事態がでてくるようになったのです。

  貸し渋り・貸しはがしがいい例で、一行取引先でそのような痛い目に遭っ
  た企業は、懲りたはずです。
 
 ○融資条件の比較・検討ができない

  一行取引先で、社長が金融関係の情報にうとい、あるいは関心がないとい
  ったような場合、銀行が提示してきた融資条件がどの程度のものか、比較し
  たり検討することができません。

  たとえば、銀行が金利の引上げを申し入れてきた場合、はたしてその引上
  げには応じなければならないのか、仮に応じなければならないとすれば、
  引上げ幅は銀行がいってきた数字が妥当なものか否かは何を基に検討すれ
  ばよいのか、という問題がでてくるわけです。

  複数行と取引があれば、他行からも同様な申し入れがあった場合、それと
  の比較検討ができますし、他行から何もそのような申し入れがなければ、
  それを理由に自社にとって不利益な申し入れに対抗することも可能です。
  (ただし、取引内容が同じでない場合がありますので、一概には言えない
  ところもありますが。)


 以上のようなことから、一行取引より複数行取引が望ましく、資金調達の窓
 口は広いにこしたことはないのですが、それも程度問題で、あまり広げすぎ
 るのも考えものです。

 「貸してくれるのなら、どこの銀行でもいい」といった考えで、資金需要が
 発生したとき、その時々に借りやすい銀行から調達していった場合、取引銀
 行の数はあっという間に広がってしまいます。

 こういったポリシーがない、無節操な取引方針は大きなマイナス要因だと言
 えます。

 心ある銀行員は、決して良くはみません。

 企業規模の拡大とともに、取引銀行の数も徐々に増えていくのが自然な姿だ
 と思いますが、新規に取引を始める金融機関として、どのような規模・業種
 の金融機関が自社にとって最適なのか、これもじっくり検討する余地がある
 ところですが、また来週号以降でそのお話をさせていただきます。


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テーマ18.   「銀行に融資を申し込みたいが、どういう準備をしてどうい
          う手順を踏んでいけばよいか?」


 
 今回のテーマは、既に取引がある銀行以外の、新たな銀行に融資を申し込む
  場合の準備と手順についてお話したいと思います。

 既に取引がある銀行への融資申し込みにつきましては、皆さんは幾度となく
 回数もこなされ、一応の準備と手順を心得ておられるのではないかと思い
 ます。

 一方、新たな銀行への融資申し込みは、それなりの準備と手順が必要に
 なってきます。

 まず、新たな銀行との出会いのきっかけですが、今回のお話は銀行からの
 アプローチではなく自社から申し込むケースですので、

   ・自社からこれはと思う銀行に出向き、融資を申し込む
   ・取引先や知人などの紹介を受けて、融資を申し込む
 
 の2とおりが考えられます。

 しかし、実際問題として、取引のない銀行へ飛び込み訪問して融資を申し
 込んだ場合、その融資の実現性はいかがなものでしょうか?

 これは常識問題の範ちゅうですね。

 飛び込み訪問を受けた銀行側の心理は、「この企業は、なぜウチに飛び込み
 で融資を申し込みに来たんだ?」と、非常に警戒心を強めます。

 現実にこういった飛び込み訪問での融資申し込みは、きわめてマレですし、
 行なったとしても、希望は持てません。

 ただし、政府系金融機関の場合は、ちょっとニュアンスは違ってきます。

 政府系金融機関は、民間金融機関の「補完」的役割りを目的としています
 ので、問題を抱えた企業の飛び込み訪問の融資相談・申し込みはOKです。
 というよりも、それが本筋の申込ルートとなります。

 (問題とは、民間金融機関の貸し渋り・貸しはがし、社会的影響力の大きい
 大型倒産の被害を受けた、などの場合です)


 さて、もう一つの、[取引先や知人などの紹介を受けて、融資を申し込む]
 これが新たな銀行に融資を申し込む際の、有力な手段となります。

 以下、この場合の準備と手順について述べていきます。

 まず、紹介者にアポイントをとってもらい,できたら同行してもらって銀行
 を訪問する際に持参すべきものですが、

 ・自社の概要がわかる資料  (会社案内、ホームページのコピー、取扱
                           製・商品のカタログなどがあれば最適ですが)

 ・申込融資の内容・希望条件 (金額、資金使途、融資期間、返済方法等)

 ・なぜ新たな銀行との融資取引が必要なのか、その理由について

 以上を簡単に書面にして持参しましょう。

 特に3番目が重要です。

 既取引行との取引が順調であれば、新たな銀行を探す必要はないはずです。

 新たな銀行側の立場に立ってみますと、この点を非常に重要視します。
 そして、既取引行との間に何か問題があってウチに申し込みに来たのか
 な?」と勘繰る気持ちがまず働きます。

 「問題の移し替えはかなわない」わけで、現実にそういった動機での新たな
 銀行探しは上手くいきません。

 新たな銀行が納得する、道理にかなった、もっともな理由がなければなら
 ないのです。

 たとえば、
 
 ・自社の業容が拡大しており、資金調達の窓口を増やす必要がある

 ・既取引行で支店の統廃合があって、取引支店が遠方になってしまった

 などです。

 まちがっても、既取引行との間で何か問題があってトラブッテいる、
 あるいは自社の業績が低迷していて、既取引行が相手にしてくれなく
 なった、などが理由であれば、その申し込み自体非常に危ういものと
 なります。


 こうして、取引のない企業から新規融資の申し込みがありますと、銀行側で
 はそれと前後して、大手信用情報機関による申込企業の企業情報を入手して、
 企業の概要を把握します。

 これと、申込企業の訪問を受けた際の話・申込内容や資料をもとに、店内
 事前協議会を開いて、この申込融資をどうするか検討します。

 断わるのか、前に進めるのか。

 その検討結果、ゴーサインがでますと、銀行から稟議書作成に必要な書類
 一式の提出要請があります。

 その内容は、

 ・企業概況書類 −  たいていは銀行が自行内で使用する、稟議書に添付
                  する企業調書一式で枚数は多いです

                   「わかる範囲で、できるだけ記入してください」と
                  言ってきます

 ・決算書類3期分程度 − 税務申告書類、附属明細書付きです

 ・その他銀行が必要と考える書類 − たとえば代表者の資産・負債の明細
                                                          など


 ここが一つのポイントになるのですが、こういった提出書類の要請があった
 場合、1日でも早く提出するにこしたことはないわけで、自社の作成能力を
 加味し、出来るだけ前倒しして、「〜日までには提出します。それでよろし
 いでしょうか?」と提出期限を明確にすることです。

 もうこの段階で、企業審査は始まっています。
 申込企業の資料作成能力が問われているのです。

 ここでもたついてしまうと、身構えている銀行担当者たちの気分は間延び
 してしまい、印象が悪くなります。

 出だし段階から悪印象を持たれないよう、素早く作成して期限を切った日
 までには必ず提出することです。

 新規取引開始に伴なう提出要請書類は、かなりのボリュームになりますが、
 これらが提出されて、はじめて銀行内部では稟議書作成にとりかかれるわけ
 です。


 
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テーマ19.   「身構えなくても融資は常識で成り立つ」



 私は銀行員時代に、融資に関する研修をたくさん受けましたが、その中で
 ある講師が言った言葉で長く頭に残っているのが、今回のテーマです。

 私はその言葉を聞いたとき、目からウロコの気分になり、「そうだ難しく
 考える必要はないんだ。融資といえども基本はシンプルなもの、常識で十分
 対応できるものなんだ」と悟りました。

 そして現在に至るまで、折に触れ、その言葉を思い出し教訓としています。


 銀行から融資を受けることに対して、必要以上に身構えたり、緊張される方
 がたまにいらっしゃいますが、そういった際、

 “あなたが知人から融資を申し込まれた場合、どう対応するか”

 といったことを一度考えられたらいかがでしょうか。

 もちろん営業目的の銀行融資との違いがあり、また個人間では義理がからん
 で仕方なく貸さなければならない、といった事情も発生するでしょう。

 それはともかくとして、あなたが知人から融資を申し込まれた場合、つぎの
 ような点を検討されるのではないでしょうか。

 ・相手は信用できる人物か

 ・貸した場合の、おカネの使いみちは納得できるものか 
  (ギャンブルや遊興費などに使われることはないか)

 ・万が一の場合、とりっぱぐれのないように対策をどうするか
  (たとえば、気休めでも奥さんを保証人にとっておこうか、など)

 ・できたら早く回収したいが、返済期日はどのように定めようか
 

 そこで、あなたが銀行に融資を申し込まれる際、立場をかえて以上の例に
 ならって申込内容を検討してみてください。

 よく文章の構成とかで、‘5W1H’とか言われますよね。
 「いつ、誰が、どこで、何を、なぜ、どのようにして」とかいうやつです。

 それとよく似ているのですが、融資の申し込みについてはつぎの5つの項目
 について検討が必要になります。

 ・いつ必要なのか    −  融資の実行日
 ・いくら必要なのか    −  申込金額
 ・何に使うのか            −  資金使途
 ・いつまでに返すのか   −  返済期日
 ・どうやって返すのか    −  返済方法、返済原資

 
 銀行に融資を申し込むといって身構えなくとも、上記の要領で考えてみれば
 いいわけです。

 そうしますと、もし申込内容に不自然な点があった場合、自ずとそれが解き
 明かされてきます。

 たとえば、例を2つ挙げます。

 ○社員へのボーナス資金を、資金繰りに余裕を持たせるため返済期間2年で
  申し込みたい
 
 →ふつう社員へのボーナス支給は夏冬の年2回ですよね。

  したがって今回(夏期)申し込んだ融資の返済は、次回(冬期)の
  ボーナス融資実行までには返済を完了していなければなりません。
 (返済がダブらないようにしなければならないのです)

  結論として、返済期間2年の申し入れは却下され、返済期間は6ヶ月に
  設定されるのが通例です。

 
 ○建設工事業で請負代金入金までの、つなぎ資金を同じく資金繰りに余裕を
  持たせるため長期分割返済で申し込みたい

 →建設工事業は、受注型・プロジェクト型営業の典型で、請負ったその工事
  に関わる材料費や下請企業への支払は、その工事の代金で支払って完結
  させるのが通例です。

  したがって、このケースも上記のボーナス資金と同様に長期分割返済の
  対応は銀行から受けられず、工事代金入金予定日までの短期融資となり
  ます。


 銀行に融資を申し込む顧客側企業として、希望条件をまとめる際、上記の
 検討項目を参考にしてみてください。

 反面、‘銀行の常識は、世間の非常識’と言われるものもあります。

 銀行内部では当り前だと思われていることでも、世間常識からすると、
 どうもおかしいと思われる点は多々あります。

 まずは、あなた御自身で、常識にのっとって融資申込内容を練ってみてくだ
 さい。
 それが出発点です。


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テーマ20.  「銀行に融資を申し込む際、二股ないし三股をかけるべき
          か?」



 今回のテーマの結論を先に申し上げますと、かけるべきです。

 ただし、その際に注意すべき点がいくつかあります。

 まず、銀行への融資申し込みにおいて、どういった場合に二股ないし三股を
 かけるかですが、つぎのように二通りが考えられます。


 一つめは、保護・安全策としてかける場合で、銀行との取引関係は、どちら
 かと言うと弱い立場にあり、融資の申し込みをしても承認されるかどうか
 微妙だというケースです。

 ある時、資金繰り上何としても借入をおこさなければならず、融資の申し
 込みをしたとします。

 しかし、承認されるかどうか微妙だという先は、銀行内部の稟議手続き、
 諾否の結論がでるまでに時間がかかります。

 いつも以上に時間がかかったりして、もし結論が不承認だった場合、その
 結果を受けて次のアクションに移っていると、時間切れで万事休すとなって
 しまうこともあり得ることです。

 そこで、そういった最悪の事態を避けるため、ある時点から別の銀行にも
 融資の申し込みをして、同時進行を見守る形をとるわけです。


 その際、注意すべき点として、つぎのようなことが言えます。

 それは、先に申し込んだ銀行の担当者等から、審査に時間がかかっている問
 題点は何なのかを探り出して、二股をかける銀行にそれを生かすことです。

 問題点にも大小さまざまなものがあります。

 短時間で解決できるものは少ないでしょうが、とにかくより上を目ざす努力
 をするしかありません。


 もう一つの注意すべき点は、どの時点で二股をかけるアクションを起こす
 のか、そのタイミングです。

 これについては、資金が絶対に必要となる日から逆算して、アクシデントの
 発生も加味し、十分余裕をもったスケジュールを当初に立てておいて、その
 中に二股をかけるスケジュールも組み入れておくことです。

 タイミングを探るもう一点は、先に申し込んだ銀行の担当者から問題点なり
 途中経過を聞き出す際、担当者の言動から感じ取れるニュアンスです。
 
 「今回はちょっと難しそうだな」と肌で感じ取れる、あるいは直感でそう
 思ったら、躊躇せず行動に移すことです。


 つぎに二股ないし三股をかける二つめのケースは積極策で、銀行との取引
 関係は、どちらかと言うと強い立場にあり、少しでも良い融資条件を引き
 出すため、取引銀行数行を競わせるものです。

 その際に注意すべき点として、まずつぎのようなことが言えます。
 
 「今回の融資申し込みは、御行以外に〇〇銀行さんと××銀行さんにも
 しております。まことに勝手ですが、3行さんの中で一番良い条件をだして
 いただいた銀行さんに決めさせていただきますので、あらかじめ御了解くだ
 さい。」

 と、入札方式であることを事前に伝えて、了解を得ておくことです。

 まあこういった申し込み方法は、銀行との融資取引に、よほどの余裕のある
 先でなければ出来ませんが、それはともかくとしまして、事前の断わりを
 せずに、3行からの融資承認の結果を受けて、

 「実は、御行以外に〇〇銀行さんと××銀行さんにも今回申し込みをして
 おりまして、〇〇銀行さんが3行さんの中で一番いい条件をだしていただい
 てますので、〇〇銀行さんにお願いすることにしました。」

 と回答した場合の、〇〇銀行さん以外の2行の心理はどうでしょうか?

 「それなら最初に言っとくべきだろう。せっかく手間ひまかけて決裁を
 とったのに何と身勝手な先なんだ。今後は付きあい方をちょっと考えないと
 いけないな。」

 と最悪です。

 くれぐれも、ご留意ください。
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テーマ21.  「資金繰り不安定業種である建設工事業が、銀行借入をスム
          ーズにすすめるには」


 今回のテーマの本題に入る前に、まず建設工事業はなぜ資金繰り不安定業種
 なのかを考えてみましょう。


 他の業種、たとえば製造業や卸・小売業では、好・不調の波は当然あるに
 しても、継続的に何がしかの仕事はあります。

 しかし建設工事業においては、仕事はあるときはあるが、ないときは全くな
 いという状態があり得ることなのです。

 というのは、建設工事業の業務はプロジェクト型で、しかも1件あたりの
 受注金額が比較的高額だということもあって、営業能力が劣ると、工事の
 受注がコンスタントに途切れることなく取れない、という事情があるため
 です。

 受注工事がコンスタントにある間は、カネ回りは順調ですが、受注が途切れ
 てカネが全く入ってこなくなったとき、さてどうするか、ということになる
 わけです。

 さらに、自社の受注が公共工事に依存していれば国の政策に大きく左右され
 ますし、また民間からの受注に依存していれば、景気変動の影響をモロに受
 けることになります。

 こういった点からも、受け身の弱さということが認識できるわけですが、
 さらに、小さな建設工事業者は自社独自での営業という形態は少なく、たい
 ていは、ある建設会社の下請、あるいは孫請といった階層に組み入れられた
 状態になっています。

 したがって、自社の受注は親方の受注能力に依存している、受け身の受注で
 あって、攻めの営業ができない点が苦しいところです。

 以上のような、諸々の要因が相まって、建設工事業が資金繰り不安定業種だ
 ということになるわけです。



 さて、それでは本題に入って、今回のテーマを実現させるための対策とし
 て、どのようなことが考えられるでしょうか。


 まず1つめは、融資の実績作りを着実に行ない、銀行に「この先なら実績も
 あるし、大丈夫だ」と思わせることです。

 通常、建設工事業の融資は工事ごとの借入になります。

 そして、その資金で工事の材料代・下請への工賃支払・社員への給料等を
 賄って、融資の返済はその工事代金の入金分を充当します。

 工事代金は、融資を受けた銀行口座に振込指定するのが通例で、振込入金と
 融資の返済がセットになった「ヒモ付き融資」となるわけです。

 こういった一連の流れを着実に何回か積上げていくと、銀行からみますと
 大きな信用力となります。


 そして、気をつけなければいけない点として、よくあるのが工事が当初予定
 より遅れる場合で、それによって発注先の検収がズレ込み、最終的には工事
 代金の振込もズレ込んできます。

 こういうイレギュラーな事態が発生した場合、それがわかった時点で銀行に
 はすぐ報告することが大切です。

 と申しますのは、銀行内部では融資条件変更の稟議手続きが必要だからで、
 イレギュラーな事態発生の報告は早い方が良いのです。

 
 つぎに、2つめの対策としましては、自社情報をコマメ・積極的に行なう
 など、銀行との日頃の付き合い方を大事にするということです。

 業種柄、また融資発生の頻度等から銀行との接触は疎遠になりがちです。

 その空白を埋めて、イザという時にスムーズに事が進められるように、銀行
 とのコミュニケーションづくりの努力を日頃から怠りなく行なっておくこと
 が大事です。
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テーマ22.  「ビジネスローンには、どのように対応すればよいか」

   昨今の厳しい経営環境により、業況面で苦戦している企業が増えて
   います。

   また、金融機関においても景気の悪化に伴ない企業倒産が増えてき
   ている影響をうけ、直近の2008年4月〜9月の不良債権処理額は、
   前年同期比大きく増加しています。

   したがって、金融機関の融資審査はより慎重、より厳しくなってきて
   います。

   そういった自社の状況、および取引金融機関の事情から「折り返し
   融資」の申し込みをしても、なかなか応じてもらえず、返済負担の大き
   いビジネスローンの返済が資金繰り上、大きなネックになっている企業
   も多いのではないでしょうか。

   商品の性格上、ビジネスローンの延滞状況は大変なもので、メガバンク
   の中には商品を廃止したところもありますし、地方銀行も含め全体的には
   撤退の方向にあります。

   貴社がもしビジネスローンの返済でお困りでしたら、お気軽に一度
   
お問い合わせのTEL(携帯へ)か、メール(お問い合わせフォームで)
      ください。



  *以下の説明文は、ビジネスローンの販売がまだ正常であった頃の
    ものですので、その旨ご了承ください。


  一時の集中的宣伝攻勢は影をひそめた感はありますが、メガバンクのビジ
 ネスローンの伸び率は著しいものがあります。

 ビジネスローンは、金融庁の要請を満たすための各行の中小企業向け融資の
 主要な担い手として、また手間ヒマをかけずに、しかもよく儲かるため、
 まさに一石二鳥の商品として、銀行にとっては非常に貢献度の高い商品だと
 言えるものです。

 そんなによく売れているビジネスローン、お客様である中小企業にとって
 どのようなメリットがあるのか、と言いますと

 1.融資の申し込みから決定までに要する日数が短い
 
 2.無担保で、保証人は代表者のみで第三者保証人は不要である

 3.手続きが簡単で、申込書類が少ない

 4.取引がなくても申し込みができる

 といったところでしょうか。

 金利はやや高めなのですが、本当にいい事づくめの融資商品のように思われ
 ますね。

 「金利はそこそこいただきますが、面倒な担保や保証人はなくして借りやすく
 しましたよ」と、銀行は中小企業に対して、甘くささやきかけているわけで
 す。

 もうちょっと突っ込んで、申し込みからの流れを述べてみます。

 このローンを扱っているメガバンクには、スコアリング方式と呼ばれる、
 中小企業の倒産確率を決算書3期分程度で予測するシステムがあります。

 その結果算出されたリスクに応じて、融資金額・金利・返済期間等を設定
 するわけですが、ある程度の損失(倒産による不良債権の発生)が発生した
 としても、全体として儲かる仕組みになっています。

 お客様企業が決算書2〜3期分を渡しますと、数日後、銀行から「融資金額
 は○○円、返済期間△△年、金利□□%でよければ御融資いたします」と回
 答があります。(もちろん、まったく融資に応じてもらえない先もでてきま
 すが)

 ここでの注意点ですが、このローンは通常のプロパー融資のように、申込
 企業のキャッシュフローにもとづいて、「この企業の年間返済能力は、◇◇
 円だ」ということを主要な判定ポイントとするものではないということ、
 すなわち、返済能力に主眼をおいていないのです。

 この点が案外と重要ポイントで、融資金の使いみちと返済期間がミスマッチ
 を引き起こし、後々資金繰り面で問題が発生してくることになるわけです。
 


 さて、当ローンは顧客である中小企業にとってメリットもあるのですが、
 十分に検討せず安易に乗っかると、窮状に陥る可能性もある、きわめて危険
 性をはらんだ融資でもあるのです。

 そこで、ビジネスローンの賢い利用方法として、一体どのような場合であれ
 ば利用しても大丈夫なのか、ということなのですが、

 ○ごく短期のつなぎ資金

 ○返済原資が確実に見込まれる

 以上のようなケースであれば、利用してもOKだと思います。

「突発的な出来事があって急に資金の入用が生じたが、期日まで日数がない」
 といった場合、申し込んでから決定までの日数が短い当ローンは間に合い
 ますし、金利が高めといっても、ごく短期の借入であれば、支払利息の負担
 はそう大きくはなりません。

 そして、返済原資に当てこんだ資金が入金になったら、確実に返済を履行す
 ることです。

 よくあるのが、返済原資が入金になっても、「まあ、先のことは何とかなる
 だろうし、せっかく借りたのだから、しばらく借りておこうか」といった
 状態になりがちなことです。

 人間、やすきに流れやすいものですが、ここは経営者のシビアーさが問われ
 るところです。

 ご留意ください。
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テーマ23.  「銀行員が貸したいと思う企業はどのような先か?」


 今回のテーマは、新規先企業から融資申込があった場合の、銀行の対応に
 ついてお話していきます。


 企業から融資の申し込みがあった際の、銀行の審査は、

 ○企業内容の審査 − 貸せる先か、それとも貸せない先の審査

 ○申込案件の審査 − 貸せる先だと判断されれば、
            ・申込金額
            ・資金使途
            ・担保力
            ・返済能力、返済方法 
  等 融資案件の妥当性

 の2面に渡って行なわれますが、今回はテーマに沿い、案件の審査は省い
 て企業内容の審査面から、銀行員はどのような企業であれば貸したいと思う
 のか、について述べてみます。


 現在、銀行間の貸出競争は激化しています。

 そんな中で、銀行員が貸したいと思う企業は、つぎのような先です。

 1.業績良好で、財務内容も特に問題がない

   いわゆる正常先ですが、業績良好までとはいかなくとも、黒字で繰損が
   なく、債務超過でない先。
   まず、これが基本的・ベースとしての基準になります。

 
 2.担保力が可

   信用保証協会付を含めての担保力です。
   担保力重視の審査から、返済能力重視の審査への移行が叫ばれています
   が、率直に言って、小さな会社に対しては、依然として担保力重視で
   しょう。


 3.取引の進展が見込まれる

   いくら貸したい先だと思っても、1回かぎりの単発融資では意味があり
   ません。
   じわじわとでも、本格的取引への期待がもてる先かどうかということです。


 4.経営者の人物面と資産力

   経営者の事業に賭ける熱意が感じられ、また誠実・律儀で信頼できる
   性格であることです。
   さらに願わくば、資産力がそこそこあれば、銀行の業績にはね返る将来
   的なメリットが期待できます。


 銀行は、以上のような観点から、総合的な判断を行ないますが、貸せる先か
 どうかを決めるのは、あくまでも総合的なもので、上に述べたような内容に
 該当するのが1つだけではOKにはなりません。


 また、以上述べてきました銀行のプロパー融資(一般融資)は、ビジネスロ
 ーンのような点数評価方法で評価されません。

 点数評価の方式では、誰がやっても答えは同じですが、一般融資は違います。

 「この位なら、まあいいか」
 「この程度なら、当面大丈夫だろう」
 「特に大きな問題点はないし、いいだろう」

 といった感覚で承認されていきます。

 経験と幅広い知識、深い洞察力が必要とされる、属人的判断に依存するもの
 なのです。


 さて、以上のような銀行員が貸したいと思う企業になるためには、どのよう
 にすればよいのでしょうか?

 まずは、ベースとなる企業の土台(業績や財務内容)づくりです。

 これなくして、後はありません。

 具体的な計画と着実な日々の努力、これに勝るものはないということです。

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テーマ24.  「銀行員が貸したくないと思う企業はどのような先か?」


 先週号で、銀行員が貸したいと思う企業はどのような先か、についてお話し
 ましたが、今回はその正反対がテーマです。

 あなたの会社が、まったく取引のない銀行に融資を申し込んだとして、銀行
 がそれを審査して、「残念だけど、この企業には貸したくないな」と思うの
 はどのような場合か?


 取引のない企業から融資の申し込みがありますと、銀行では、まず申込企業
 に関する必要最少限の資料を集めて、本格的な稟議手続きを進めるべきか、
 それとも初期段階でお断りするべきかを決める「融資事前協議会」なるもの
 を支店内で開きます。

 貸出競争が激化している今日、「いい先には積極的に貸したい」、と思う
 反面、不良債権問題で懲りているため、「あえて火中の栗は拾いたくない」
 という意識も銀行員にはあります。

 銀行員の意識は、基本的には後ろ向きです。


 以下に、銀行員が貸したくないと思う企業のポイントをいくつか述べてみま
 す。

 1.業況懸念先である

   債務者区分が要注意先ないし破たん懸念先で、赤字・繰越損失・債務超
   過の先はまずダメです。
   
   正常先でも、業況不安定あるいは財務内容に問題がある先は、改善の方
   向づけがキチッとなされているかどうか、が問われます。


 2.黒字であっても返済能力に問題がある

   黒字であるといっても、その程度はピンからキリまでです。
   
   過大債務(借入金)・返済年数の問題とも関連してきますが、申込企業
   の実力(キャッシュフロー)をはるかに超えた借入金を抱えている場合
   現状は資金繰りをヤリクリして何とか返済を続けているものの、いつま
   でもつのか、ということになるわけです。


 3.企業規模からみて、取引銀行の数が多い

   資金調達のパイプを太く保っておくのは良いことなのですが、程度の
   問題です。

   明確な基準があるわけではありませんが、あまりにひどいと、
   「この企業の銀行取引は、場当たり的でその場しのぎだな。貸してくれ
   る銀行があれば、どこでもいいんだな」と、
   経営者の銀行取引方針の有無、無節操さを疑われることになります。


 4.経営者に問題がある

   経営者に事業に賭ける熱意が感じられない。

   たとえば、何を聞いても他人事みたいだ、あるいは経営者としての責任
   感や重みが感じられる発言が聞かれない、というようなことです。

   もう一つ、経営者の人物面ですが、不誠実で裏表がある、というような
   印象を持たれますと、嫌気がさされます。


 5.自行との今後の取引について進展が期待できない

   企業内容は特に問題なくOKだとなっても、銀行にとって1回かぎりの
   融資に終わったりすれば意味がないわけです。

   当然、自行の営業努力で進展させることは認識していても、初期段階で
   それが見込めない場合は、お断りの方向になるでしょう。


 さて、つぎの2項目については、少なくとも私はそれを発見した段階で後向
 きの気持ちになり、嫌気がさしてきました。

 6.商工ローンや街金の利用がある

   申込企業から提出された決算書の借入金内訳書に、銀行以外の名前が
   記載されていること自体ごく稀ですが、こういった金融会社の名前が 
   載っていると、
   「この会社は、まともな銀行取引からはみだした会社なんだ」
   という印象を持ってしまいます。


 7.過去に倒産歴がある

   社名は変わっていても、以前、倒産実績があった。
   あるいは、代表者個人に倒産実績があった、というような場合です。

   近時、政府の方針として、「再チャレンジ」云々が喧伝されていますが
   まだまだ実情は追いついていません。

   

 以上、銀行員が貸したくないと思う企業のポイントをいくつか述べてみまし
 た。

 前回、銀行員が貸したいと思う企業のポイントをいくつかお話しましたが、
 その際、貸せる先かどうかを決めるのは総合的なもので、該当項目が
 1つだけではOKにならないと述べました。

 しかし、今回の貸したくないと思う企業についての判断は、総合的なもので
 はなくて、致命的なものが1つでもあれば、それだけでアウトになります。

 とはいうものの、それなりの理由があって、改善可能、あるいは納得のいく
 説明ができるのであれば、取上げが全く不可能というものでもありません。

 気になるポイントがあるのであれば、申込段階で事前に申し添えておくこと
 も大切なことだと思います。
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テーマ25.  「銀行員が取引を続けたいと思う融資先はどのような先か?」


 先々週号・先週号で、銀行からみて新規先を対象に、銀行が貸したいと思う
 企業とは、また貸したくないと思う企業とはどのような先か、についてお話
 してきました。

 それを受けて今週号・来週号で、銀行からみて今度は既存取引先を対象に、
 銀行が取引を続けたいと思う融資先、また取引を打ち切りたいと思う融資先
 はどのような先か、についてお話していきます。


 まず今週は、銀行員が取引を続けたいと思う融資先についてですが、具体的
 に挙げていきますと、つぎのような先です。

 あなたの会社は該当しているかどうか、じっくり考えてみてください。


 1.安心して貸せる先

   まず、これが基本で大前提です。

   銀行の融資審査基準には安全性・収益性・その他種々ありますが、優先
   順位でいくと、1番目が安全性、2番目が収益性になってこれが逆転す
   ることはありません。

   融資金の返済が確実に見込める先とはどのような先かと申しますと、

  ・業況が良い先、あるいは安定している先
  ・財務内容も特に問題がない先
 
   以上のような先が該当してきます。

 2.担保力のある先

   返済能力重視の審査への移行が叫ばれていますが、実態はまだまだ担保
   重視でしょう。

   信用保証協会付、不動産・定期預金担保などで融資金がある程度カバー
   されていれば、銀行にとっては融資先に万が一の事態があった場合でも
   安心だということになるわけです。


 3.自行との取引内容が良い先

   会社単体のみならず、代表者個人・役員・従業員等も含めて総合取引が
   進展していて

  
  ・預金取引も程々にあって、預貸率や実質金利の数値が高い
  ・外国為替や投資信託など手数料収入もけっこうある
   
   など銀行にとっては、よく儲かる先であるということです。 

 4.取引内容以外の仕振りが良い先

   これは例えば、返済期日はキチッと守られている、あるいはその他の
   約束事も順守されているなど、上記1.2同様銀行にとって安心して
   付き合える先ということになります。


 さて、以上の4項目すべてに該当する先は、そう多くはないだろうと思い
 ます。

 実際は、致命的なマイナス要因がなく、上記のうちのいくつかに該当するも
 のがあれば、銀行との取引続行は可能だと思います。

 
 では、いわゆる業況懸念先・低迷先はどうなのでしょう?

 現在、上記1に該当する先でも、長い年月の間には業況が芳しくない時期も
 当然でてくるでしょう。

 そういった状況に陥った際の重要なポイントは、

  ・事業計画書ないし経営改善計画書などで、業況が好転する見通し
   を明確に数字で示す

 ことです。
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テーマ26.  「銀行員が取引を打ち切りたいと思う融資先はどのような先
          か?」



 先週号で、銀行が取引を続けたいと思う融資先はどのような先か、について
 お話しましたが、今週号はその正反対がテーマです。

 あなたの会社が、取引銀行から融資取引を打ち切られないために、以下の
 ような状況に陥ることのないよう、くれぐれもご留意ください。


 1.融資金の返済が延滞がち、ないし延滞が解消しない先

   融資金の延滞は、一旦発生するとなかなか正常化しないことが多く、
   延滞グセになりがちです。

   顧客心理として、一度延滞してしまって、それはクリアーしたものの、
   その後ちょっと資金繰りが苦しい月があると、「もう延滞実績もある
   ことだし、一度も二度も同じだな、まあ今月もいいか」といった甘えも
   つい起こりがちです。

   しかし銀行サイドとしましては、融資金の延滞は重く大きな問題です。


 2.業況好転の目途が立たない先

   決算の状況が、数期連続赤字→繰損拡大→債務超過というように悪化の
   一途をたどるようになってくると、銀行にとってはお荷物的存在になっ
   てきます。

   そこで問われるのが、企業側の改善努力です。

   必死の企業努力にもかかわらず、上記のようなジリ貧傾向にあるのであ
   れば、銀行も何とか支援を続けたいと思うでしょうが、反対に

   ただ手をこまねいているだけで、何ら具体的な改善対策もでてこない、
   あとは廃業か倒産を待つだけ
 
   といったような状況であれば、銀行も見放さざるをえないと言えるで
   しょう。


 3.取引仕振りが悪い先

   ・預金はゼロに近い、またいっこうに上向く気配もない
   (預貸率が低く、実質金利も芳しくない)

   ・銀行からの営業協力要請(たとえば投資信託や関連会社扱いのクレ
    ジットカードなど)にも一切応じようとしない

   ・代表者・役員・社員等の関連取引も一切ない
   
   以上のような取引内容が芳しくない先は、銀行からするといわゆる
   オイシクナイ先にあたるのですが、その他に、日常の預金・貸金等の
   取引において、あらゆる面でとにかく約束事を守らないルーズな企業
   です。


 4.倒産の兆候が見えはじめてきた先

   商工ローンの利用、当座預金の入金待ち、支払手形の依頼返却、融通
   手形の発見などは、倒産に至る過程でよくみられる現象です。

   これらの問題を抱えた企業すべてが、破たんに至るということではあり
   ませんが、銀行は融資先のこういった事実を発見したり確認したりする
   と、万が一の場合を想定して、取引解消に向けての準備を始めます。
 

 銀行サイドからしますと、リスクが小さくて、そこそこ収益が上げられる、
 すなわち自行にとってメリットがある融資先は、当然のことですが、取引を
 続けたいと思うものです。

 しかし、その逆の、リスクが増大してきている先や手間ヒマばかりかかって
 収益に何ら貢献しない先などは、もう取引を打ち切りたいと思うようになり
 ます。

 ご留意ください。
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テーマ.27  「銀行との信頼関係は大切に」


 銀行融資は、顧客と銀行との信頼関係の上に成り立っています。

 お互いに、双方の「信用」という目に見えないものを頼りに取引を続けてい
 くわけですので、信用を維持するそれなりの努力が必要になってきます。


 では、あなたの会社が銀行から信頼されているということは、わかりやすく
 言えばどういうことなのでしょうか?

 それは、銀行からみて、「この会社は、大丈夫だ」ということなのです。

 非常にアバウトな表現ですが、中味はいろんな要素を含んでいます。

    ・当面の業績、融資金の返済面で不安はない
    ・約束事はキチッと守る会社だ
    ・社長は誠実・律儀な人物だ

 などなどから、安心して付き合っていける相手とみなされているということ
 につながってくるわけです。
 

 それでは、銀行との信頼関係はどのようにすれば築けるのでしょうか?

 その決め手は、“日頃の付き合い方”にあります。

 と言うと、銀行や特定の行員への中元・歳暮を欠かさず贈る、あるいは接待
 したり、というようなことだと認識されるお方がおられますが、ここで言う
 付き合い方とは、そういうものではありません。

 その付き合い方とは、

 ・定期的に自社の試算表や資金繰り表などを提出し、直近の業況や当面
  の資金繰り見通しなどを報告する

 ・銀行からの申し出(たとえば金利の引き上げや追加担保の要請など
  融資条件の変更)には、応じる応じないは別にして、誠意をもって
  対応する

 ・その他、銀行から投資信託などの営業面での協力要請があった場合、
  ムゲに断わらず、さほどの負担でなければギブアンドテイクの精神
  で検討してみる

 というようなことになります。


 以上のような努力を怠っていると、銀行とは“疎遠な付き合い”になりま
 す。

 「いざ資金調達を急がなければ」という時になってあわてても、そこから
 は非常に時間がかかることになります。

 片や日頃の努力が行き届いていると、銀行との呼吸もツーカーで、銀行の
 対応も当然早くなります。


 今回のまとめですが、

 ・小まめな努力で、銀行に自社をよく知ってもらう
 ・持ちつ持たれつ、ギブアンドテイクの関係を築く

 ことで、銀行と親密な間柄になることが大事です。
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テーマ28.  「銀行と日常の接触をどう保っていけばよいか」


 先週号で、銀行との信頼関係を築く上で“日頃の付き合い方”が大事だと
 いうお話をしました。

 今週は、その付き合い方について、一歩突っ込んだお話をします。


 まず一つめは、先週お話しました

 ・定期的に自社の試算表や資金繰り表などを提出し、直近の業況や当面
  の資金繰り見通しなどを報告する

 ということですが、これに出来るならば自社の重要な変化、たとえば新商品
 の開発であるとか新規得意先との取引開始などがあれば、簡潔に書面にして
 提出しておきましょう。

 要は試算表や資金繰り表なども含めて、自社の現状を正しく銀行に認識して
 もらっておくことが大事なのです。

 これらの提出書類は、銀行内部では貴社の融資稟議書ファイルに綴り込まれ
 るはずで、その蓄積がイザという時にものをいってくるわけです。

 反対に、こうした日頃のコマメな努力がまったく無い場合はどうでしょう
 か?

 空白部分を埋めるために、日頃手抜きをしていた分、かなりの時間と手間ひ
 まをかけなければなりません。

 こういったことは、プライベートな個人間にあてはめてみればよくわかりま
 す。

 「日頃これという付き合いもないのに、カネが要るときだけすり寄ってくる
 身勝手なヤツだ」

 となるわけです。

 カネを借りたいというニーズのある時だけ接触をはかるのではなく、その時
 のために日頃からコマメな努力を惜しまず続けましょう。


 “日頃の付き合い方”の二つめは、銀行の担当者を大事にしましょう、と
 いうことです。

 銀行の担当者は、自社と銀行との橋渡し役となり、自社が融資を申し込んだ
 場合、自社の融資稟議書を作成して、そしてそれが上席者に回れば自社の立
 場に立って承認がおりるよう答弁してくれる、自社にとって重要な役割を
 負った人物です。

 もっともその人の性格や能力面で、自社としっくりこない人に当ることもた
 まにありますが、そこで短気を起こしてはいけません。

 銀行の担当者は、平均すれば2〜3年程度で交代していきます。

 長い目でみて、自社にとって好ましくない担当者に当ったときは、しばらく
 ガマンすることです。

 まちがっても軽視したり、ないがしろにしたりすることのないよう、お気を
 つけください。

 そのような態度にでると、担当者も人の子です。

 自社のことを「面白くない企業だ」と思って、自社に対する貢献などまった
 く期待できなくなるでしょう。

 自社にとってマイナス効果しかありません。


 最後に付き合い方の三つめは、自社の方から積極的に銀行へ出向いていき
 ましょう、ということです。

 銀行の担当者の自社への訪問は、大きい銀行ほど期待できませんし、また
 期待すべきではありません。

 現在、規模の大小を問わず、銀行は効率化を最優先していて、銀行側の都合
 で、支店の統廃合や人員の削減などは日常茶飯行なわれています。

 担当者の自社への訪問が、数年前に比べ激減していて、その分コミュニケー
 ションがとりにくくなっているのは事実です。

 しかし銀行サイドに立ってみると、一支店一担当者の裁量ではどうすること
 もできないレベルの話でもあるのです。

 そうであるのならば、あとは企業側でそのマイナス要因を克服するしかあり
 ません。

 過去は過去として、「さあ、銀行へ行こう!」
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テーマ29.  「銀行取引におけるタブー集」


  銀行との継続的な融資取引において、銀行サイドからの信用を維持する上で、
 言ってはならないことや、やってはならないことがあります。

 それが今回のテーマですが、一方で、そういった銀行取引におけるタブーか
 ら反転して、銀行からの信用を維持するために、そう言うべき、あるいは、
 そうするべきといったこともあります。

 これらは、世間常識でカバーできるものがほとんどだと思いますが、銀行取
 引を少し勉強しないとわからないものもあります。

 銀行取引について、あまりにも無知であると痛い目に遭うことがあるので
 す。

 一つ例をあげます。
 
 みなさんは、「手形の依頼返却」といったものをご存知でしょうか?

 自社が支払手形・受取手形ともに扱っていなければご存知ないかもしれませ
 んが、手形振出人の立場からすると、
 
 「自社振出手形の決済ができないので、支払先(手形裏書人)に、その先の
 取引銀行を通じて自社の取引銀行に、手形返却の依頼手続きをとってもらう
 よう要請すること」

 です。

 一般的にこういった事態は、支払手形振出人について言えば、資金繰り状態
 は末期的で破たんも時間の問題か、ということになります。

 当然、自社の取引銀行内部では、手形の依頼返却を受けたという事実から、
 自社の信用不安が行き交うことになりますし、今後の融資取引に大きな影響
 を及ぼしてくることも充分予測できるところです。

 あなたは、「そんなの当り前じゃないか」と思われるかもしれませんが、
 中にはそこまで理解・認識されていない方もいらっしゃいます。

 「それはあくまで事務手続きだ」、あるいは「手形の引き落としは預金部門
 のことであって、融資を扱う貸付部門とは別のことだ」、といった認識レベ
 ルなのです。

 要は自社の信用不安に関わる重大なことを、この上なく簡単に軽く考えてお
 られたのではないかと思います。

 あるいは切羽つまっていて、そこまで考えを巡らす余裕がなかったのかも
 しれませんが…。

 
 さて、つぎに銀行との信頼関係を築く上で、言ってはならないことや、やっ
 てはならないことの例を3つあげます。

 1.組織を逸脱しない

  たとえば、いくら支店長と親しいからといって、融資の申し込みを支店長
  に直接行なうのはご法度です。

  銀行は組織を重んじます。

  こうした行為は、銀行の担当者を無視、あるいはないがしろにしている
  ことになります。

 2.うらみ言を言わない

  バブル期に銀行のすすめで融資を受けて株を買ったものの、思うように
  値上がりせず長く塩漬け状態が続いて、売るに売られず銀行への支払利息
  が大きな負担となった。

  よくある話ですが、こうしたことを銀行の責任にして、銀行にうらみ言を
  言ってはいけません。

  株の購入、それにからむ銀行からの借入を決断したのは顧客自身です。

 3.嘘をつかない

  典型的な例は、いくとおりもの決算書を作って銀行に偽りの決算書を提出
  することです。

  業種によっては、監督官庁にも決算書の提出が必要です。

  それに税務署提出、そして銀行提出、もう一つどこにも提出しない真実の
  決算書です。

  偽りの決算書を提出された銀行は、決算書の分析をコンピューターで行な
  いますが、巧妙な粉飾は見抜けない場合もあります。

  しかし、嘘はどこかでバレます。

  それが発覚したとき、自社の信用は地に落ち、最悪の場合、取引解消にな
  るでしょうし、取引続行ができたとしても、失くした信用を取り戻すのに
  多大な時間を要することになります。


 最後に、銀行からの信用を維持するために、そう言うべき、あるいは、そう
 するべきといったことですが、

 1.筋を通す

  先に述べました例で申しますと、融資の申し込みは組織を逸脱せず順序を
  踏まえ、やはり担当者にするということです。

 2.約束は守る

  きわめて常識的なことであって、銀行取引の土台となるものですが、言う
  は易く行なうは難し、といったものでもあります。
 
  時間、期日、その他諸々、すべてが貴社の信用につながっています。

                                                                                                   ↑ テーマの一覧に戻る


テーマ30.  「経営計画書(事業計画書)の重要性について」


 あなたの会社では、今回のテーマである経営計画書(事業計画書)といった
 ものを作成されていますか?

 とお尋ねしますと、

 「いや、そんなもの今まで作ったことがないし、なくてもやってこれた」

 「人手が足りず、ぎりぎりでやっているので、そんなものに関わっている
 暇なんかないよ」

 「世間では景気がいいと言われているけど、我々中小企業には厳しい環境の
 もと、売上や収益の見通しとか言われたって立てようがない」

 等々の声が聞こえてきそうです。

 たしかに経営計画書というと、えらくご大層に聞こえますが、要は向こう
 3〜5年間における損益計算書の要約したものと、それをどうやってやるか
 という施策を簡潔に記したものです。

 こういったものは、日頃、社長さんの頭の中では常にシミュレーションが
 繰り返されているものだと思います。

 それを、ある時ふと立ち止まって、紙の上に表してみればいいのです。

 それが経営計画書の出発点です。

 そして、そうすることで、今までと違った発想・アイデア・気付きといった
 ものが生まれてくるかもしれません。

 また、それは‘絵に描いたモチ’では意味がなく、行動を伴なった実現性の
 あるものでなければなりません。

 
 平成11年の「金融検査マニュアル」制定以来、経営計画書の重要性は一段
 と高まっています。

 銀行と融資取引を続ける限りは、常についてまわるものとなっているのです。

 一つは、担保重視の審査から、キャッシュフロー(返済原資)重視の審査へ
 の移行、そうなってきますと、将来的なキャッシュフロー(返済原資)を何
 で確認するかというと、企業が作成した経営計画書となるわけです。

 もう一つは、「要注意先」以下にランク付けされている企業が、上位へのラ
 ンクアップを目ざす際に、経営(改善)計画書が有力な手段となります。

 計画の実現性が高く、業績改善の見通しが経営計画に示されていて、その後
 の計画達成の進ちょく状況が順調であれば、銀行の寛大で柔軟な対応が期待
 できます。


 以上のように、経営計画書の重要性をご理解いただけたと思うのですが、
 これは銀行員が最も欲しがる資料の一つです。

 その理由は、これが有るのと無いのとでは、融資稟議書の作成やその後の行
 内での決裁・承認に向けての進み具合が、うんと違ってくることもあります
 が、もう一つ、

 上記のキャッシュフロー重視の審査への移行から、融資金の返済を先々まち
 がいなく履行してもらえるのかどうか、それを確認する手段が経営計画書で
 もあるからです。

 要は、銀行員の安心材料でもあるわけです。


 つぎに、経営計画書を作成する際に、注意しなければならないポイントを
 いくつか挙げておきます。

 1.市販の書物に載っているようなフォームを目指しますと、なかなか前に
   進みません。

   ポイントは参考にして、見本よりずっと簡素化してもOKです。

   気楽に取り組みましょう。

 2.でき上がった経営計画書を銀行員がみて、
   「毎期、売上も利益も右肩上がりだけど、本当のところ実現性はある
    のだろうか?」

   「いいことばかり書いているけど、実態とかけ離れているようで、どう
    も信ぴょう性に欠けるな」

   というような銀行員が首を傾げたくなるようなものは、自社の信用力を
   損なうことになります。

   逆に、真剣に検討して作成されたものは、読み手にその真剣度が伝わる
   ものです。

   くれぐれも、片手間で作成されることなどないように、ご注意くださ
   い。


 最後に、小さな会社ではふつう、経営計画書は作成していないでしょう。

 しかし、小さな会社でも作成は可能ですし、自主的に作成していれば、
 それだけ真剣に経営に取り組んでいるということで、銀行の評価も高く
 なります。

 形式にこだわらず、気楽に取り組んでみましょう。
                                               ↑ テーマの一覧に戻る


テーマ31.  「決算書をどう考えるか 〜 粉飾も含めて」


 平成11年に「金融検査マニュアル」が制定され、信用格付け及び債務者区
 分といった新しい範ちゅうが導入された結果、銀行の融資審査のポイントは
 旧来の、

  ○企業の返済能力           (返済の確実性はどうか)

  ○申込融資実行による銀行の収益性   (儲かる融資か)

  ○他行との融資シェア比較       (自行の位置づけはどうか)

  ○担保力            (取入担保による保全力は充分か)

  ○申込融資の取り上げ効果       (メリットのある融資か)

 といったものの総合判断から、企業を格付けによってランク付けし、それに
 応じて銀行の融資姿勢、方針が決められるという方式に変化してきました。

 債務者区分は、銀行が融資先を業況や融資金の返済状況等から財務力・信用
 力を勘案して「正常先」「要注意先」など5つに区分し、それぞれの区分に
 応じて取引方針を決定します。

 今では、信用格付けと債務者区分の両者は整合性も図られ、同じように使わ
 れています。


 融資先企業の信用格付けにおいて、圧倒的に大きなウエイトを占めるのが、
 定量分析、すなわち融資先より毎期提出される決算書から、財務比率を算出
 して作成される財務格付得点表です。

 その後、経営者の能力、企業の販売力・技術力などの定性要因が加味されて
 最終的なランクが決定される仕組みになっています。


 こうした銀行の融資審査方法の大きな変化をみてきますと、現行制度のもと
 では、決算書が大きな存在意義をもってきていることが、ご理解いただける
 と思います。


 たとえば、ある企業の今期決算が赤字だったとすると、財務格付の点数は
 低くなって、それまでの格付ランクから落ちるかもしれませんし、債務者区
 分で「正常先」であった企業でも2期続いて赤字計上となると、特殊要因が
 なければ「要注意先」にランクダウンとなる可能性は大です。

 格付けや債務者区分でランクダウンとなりますと、当然のことながら、その
 後の融資は受けにくくなってきます。

 そこで企業側に立ちますと、ランクダウンの自衛手段としてでてくるのが、
 何としても黒字を死守しようとして講じられる、あの手この手です。

 そういった自衛手段が真っ当な企業努力によって講じられれば、何もいうこ
 とはないのですが、問題なのは、安易にか、やむを得ずか、の程度の差はあ
 るにせよ、実態は赤字であるのに黒字を装う、いわゆる粉飾です。

 
 銀行では、企業から提出される決算書に対し、真意は「中小企業は多少の
 粉飾はあるだろうな」との疑念は抱きつつも、表向きは粉飾などありえない
 というスタンスで毎期評価しています。

 毎期の決算書はコンピューターで分析され、異常な分析結果にはマークが
 付いて、異常の解明に向けての追究が指示されます。

 簡単な粉飾であれば、こういった追究活動で実態が解明されてきます。

 そして、程度の差はあれ、粉飾という事実が表面化しますと、銀行の融資先
 に対する信用力は急速に低下し、その後の融資取引に大きく影響してきま
 す。

 企業側が行なう粉飾の代表的なものとしては、

  ・在庫の水増し
  ・減価償却の完全未実施、あるいは一部未実施
  ・翌期売上の今期への前倒し
  ・今期仕入の翌期へのズラシ

 などが挙げられると思いますが、銀行側も粉飾チェックの意味合いから、
 融資先から決算書の提出を受ける際は、勘定科目の内訳書から税務申告書類
 の付表まで一式書類の提出を要請しています。

 
 私が現役の銀行の融資担当者だった頃、ある担当先企業の決算書分析表に、
 数十万円の純利益が数期ずらっと並んでいるというのがありました。

 それをみた時の率直な印象は、「何と素晴らしいコントロール力だなあ」と
 呆れるとともに、「現実は、こんなことってあり得ないだろうな」といった
 ものでした。

 企業サイドに立ってみますと、「誰が好き好んで粉飾なんかやるものか。
 背に腹がかえられず、やむなくやるんだ」ということになるかと思います。

 が、やむを得ず一度粉飾をやってしまうと、翌期でそれをクリアーできない
 ため、毎期々々それを引きずることになったり、さらに輪をかけて粉飾を
 重ねるといった事態になりがちです。

 そうなってくると、自社でも実態の数字がいくらとか、わけが分からなく
 なって最悪の状態に陥りがちです。

 銀行から融資を受けるために、余分な税金を払って、会計数字もグチャグ
 チャになってしまい、わけが分からなくなり、さらに銀行にバレないだろう
 かと不安もつのってきます。

 こうみてくると、粉飾をすることによって、何もいいことは起きてきませ
 ん。

 
 一時的・突発的な赤字は別にして、企業であるかぎり、いくら真っ当な企業
 努力を重ねても赤字に陥ることはあると思います。

 そうした場合、安易な対策をとらずに、銀行に「現状は……ですが、・・・
 の対策を、いま全社一丸となって実行中です」と、劣勢を挽回する前向きな
 気持ちと企業努力を報告しましょう。

 銀行員も人の子です。

 そういった、窮地から抜け出すために、必死の努力を重ねる企業に何とか救い
 の手を差しのべたいと思うものです。
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テーマ32.  「決算調整でいかに利益をだすか」


 先週号では、現在の銀行融資審査において、顧客企業から提出される決算書
 が大きな存在意義をもっている、ということについてお話しました。

 今週もその続編で、決算書についてのお話です。


 通常、どの企業も決算月末が過ぎますと、決算事務・集計という作業に入り
 ますが、その際の注意点をいくつか述べていきます。

 その中で、減価償却費については、粉飾の手段として先週号でも少し触れて
 いますが、税法上「各資産の毎期の費用化(=減価償却費の計上)はここま
 でしてもらっていいですよ」という限度額が定められていて、それにもとづ
 いて計算しますと、会計上は費用で、税金計算上は損金となります。

 したがって、税法上は限度額の範囲内であれば合法的なものなのですが、
 決算書をなんとか黒字にしたい企業は、これを逆手にとって、減価償却の一
 部あるいは完全未実施で費用を少なくして、利益を水増ししようとします。

 税務上は税務署が文句を言うわけではなく、これでいいのでしょうが、問題
 は銀行の見方です。

 銀行では、このような場合、「費用化すべきものをしていない」と受けとめ
 て、粉飾とみます。


 もう一つ、よく似た例として、引当金の計上・未計上があります。

 引当金とは、将来の損失発生に備えて、毎期法定限度額内で費用化していく
 ものです。

 代表的なものとして、貸倒引当金を例にしますと、売掛金等の金銭債権があ
 る企業は、将来の貸倒損失に備えて、毎期末の実質債権額に応じて、通常、
 繰入額を計算し、引当金に繰入計上していきます。

 しかし決算書の黒字化に苦しむ企業のこのへんの考え方は、減価償却費と同
 じで、税務上問題がないのであれば、引当金への繰入を調節して、利益の水
 増しを図ろうとするかもしれません。

 実際のところ、銀行員の目でみますと、減価償却費の動きは注意深くみます
 が、引当金についてはそれほどでもなく、サラッと流しがちです。

 しかし、減価償却費・引当金ともに、利益をだすために調節しますと、銀行
 の見方は粉飾となって、銀行が分析した内部の決算書データは修正されま
 す。

 ご注意ください。


 つぎに、前向きなお話です。

 損益計算書で、売上総利益以下の構成は以下のようになっています。

      ・売上総利益

                販売費・一般管理費
      ・営業利益

                営業外収益
                営業外費用
      ・経常利益

                特別利益
                特別損失

      ・税引前当期利益

 以上のうち、売上総利益・営業利益・経常利益・税引前利益の見方として、
 銀行では上位の利益ほど重要視します。

 なぜかと言いますと、上位の利益ほど本業に関わる度合いが高いからです。

 そこで申し上げたいのは、上述した観点で、期中日々行なってきた会計事務
 の結果を決算集計作業の中で見直してみる必要がある、ということです。

 たとえば、販売費・一般管理費に計上しているものの中、通常の営業取引以
 外の活動から生じた費用(営業外費用)、あるいは経営の過程において発生
 した経常的なものではない損失(特別損失)はないか、

 という観点で見直し結果、該当するものがあれば、その分販売費・一般管理
 費が減少し、営業外費用ないし特別損失が増加することになり、税引前利益
 額は同じでも、営業利益額や経常利益額は増えることになります。

 と申しましても、無理やりこじつけるのは問題があります。

 あくまで常識的レベルでのことですので、ご留意ください。
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テーマ33. 「企業として借入金の限度額をどのように考えておけばよいか」


 「あなたの会社の借入金の限度額はいくらですか?」と質問された場合、
 あなたはどのようにお答えになりますか。

 人によっては、「それは金融機関が決めるものだろう」とおっしゃる方が
 おられるかもしれませんが、金融機関にしてもビジネスローン以外で、この
 企業の貸付限度額はいくらまでと、明確な数字を設定しているわけではあり
 ません。

 また、企業側から金融機関に対しての質問で、「当社の借入枠はいくらです
 か?」とか、「ウチはいくらまでなら貸してもらえるのですか?」といった
 ようなことをよく聞くことがありますが、手形割引枠や当座貸越枠で設定さ
 れたもの以外、借入枠といったものはありません。

 金融機関としては、企業の業況推移を的確に把握して、臨機応変に対応して
 いくというのが基本姿勢でしょう。

 不動産担保に1億円の根抵当権を設定しているから、1億円までは必ず融資
 しますというわけではないのです。


 では、企業は今回のテーマをどのように考えればよいのでしょうか。

 一般的には、借入金限度額の基準として、つぎのようなものがあげられます。

 1.借入金月商倍率
   借入金が月商の何倍あるかによって判断するもので、業種によって若干
   ちがってきます。

   大まかにいって、製造業で6ヶ月以内、その他業種で3ヶ月以内が目安
   とされています。


 2.借入金依存度
   借入金の総資本に対する割合のことで、50%以内が安全圏です。


 3.債務償還年数
   借入金の残高(債務)÷返済能力(税引後当期純利益+減価償却費)が、
   10年以内なら正常先に格付けされるため、これが一つの目安になって
   います。

 これらは金融機関サイドでは常識的に使われている基準です。

 御社の計数を上記にもとづき算出してみてください。
 いかがでしょうか?
   

 一般的には、上記基準内にあてはまる企業は少ないのが現実です。

 もともと中小企業は小資本(ギリギリの資本金)で出発しているため、企業
 活動が軌道にのりはじめると、どうしても他人資本に依存しがちになりま
 す。

 金融機関サイドでもその辺の事情はある程度心得ていて、杓子定規に上記
 基準をあてはめていき、基準をオーバーした企業は融資不可とすると、貸す
 先もどんどん減っていくわけで、「設備資金の返済はキャッシュフローの範
 囲内かな?、運転資金はどこまで折り返し融資ができるかだなあ」といった
 ような感覚で、企業の返済能力の推移をみながら審査しているわけです。


 好き好んで借金を増やす人はいないと思います。

 背に腹はかえられないので、やむなく借入金依存となるのでしょうが、
 「まあいいか」「何とかなるだろう」といったちょっとした気のゆるみや、
 安易さがアザとなって気がつけば借金が大きく膨らんでいたという事態は、
 よくあることです。

 ご留意ください。

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テーマ34.     「銀行に債務超過といわれた場合どうするか」


 銀行から融資を受けている企業は、毎年決算を終了して税務署に申告を済ま
 せますと、一式書類をコピーしてその銀行に提出することになっています。

 決算書類の提出を受けて、銀行ではその企業の格付け見直し作業に入ります
 が、その結果、銀行から

 「今回の格付け見直しで、御社は残念ながら△△百万円の債務超過となり、
 それが大きく影響して格付けはランクダウンし、債務者区分も正常先から要
 注意先になりました。」

 というようなことを告げられるケースがあります。

 
 「自社作成の決算書では債務超過でないのに、銀行の格付け見直しでは、な
 ぜ債務超過になるんだ?どうも納得がいかない」

 と疑問に思われる方もいます。

 そのような場合、融資を受けている企業としてはどのような対応をとればよ
 いのでしょうか。

 
 銀行は格付け作業の中で、実態B/S(貸借対照表)を作成します。

 これは、資産勘定の中で

 1.時価評価できるものはそれを行ない、簿価との差額をみる
   たとえば代表的なのは、土地価格です。

 2.資産性がなく費用として評価すべきものは、控除する
   これは雑勘定といわれるもので、たとえば代表者への仮払金・貸付金
   などで、会社への返済がまったく見込めない状況である場合は控除され
   ます。

 3.不良資産とよばれるもので、これも控除する
   不渡りを受けてまったく回収の見込みのない売掛金・受取手形や、品質
   劣化などで換金性が著しく乏しくなった商品在庫などです。

 これらの他にもいろいろあるのですが、銀行はこういった資産勘定の中味を
 追究していくことで、上記のような例で該当するものがあれば、その金額を
 自己資本の額から減額することによって、より実態に近いB/Sを導き出し
 ます。

 その結果、自己資本の額がマイナスとなった場合、上記のような申し出があ
 ったりするわけです。


 もともと小さな会社は、ギリギリの小資本でスタートしていますので、当然
 自己資本の額も小さいものとなっています。

 そこへ、ちょっとした赤字や今回のような資産勘定の見直しがあると、また
 たくまに債務超過に陥ってしまう可能性は高いわけです。

 が、それを言ってても愚痴になるだけです。

 事態の打開に向け、どう対応していくかですが、まず債務超過となった算定 
 根拠を銀行にただしてみましょう。

 そして、それを聞き出して、反論できることはないかを検討してみましょう。

 銀行との解釈・認識の相違や状況の変化といったこともあります。

 たとえば、

 代表者への仮払金・貸付金は従来、返済は見込めなかったが、親戚の援助も
 あって、分割での返済が見込めるようになってきた

 とか

 近時、近隣で不動産の売買事例があれば、「御行は弊社所有の土地の時価を
 路線価で評価され、XX百万円と計算されていますが、最近近くであった
 売買事例で計算すると、○○百万円になりますよ」

 といった具合に少々コジツケでも、ダメモトの精神で反論してみましょう。

 黙っていては、コトは進展しません。

 
 つぎに、銀行の算定根拠をどう検討しても、やはり債務超過だという場合、
 その債務超過を何年で解消できるかということが重要なポイントになって
 きます。

 債務超過額 ÷ キャッシュフロー(税引後当期利益+減価償却費)の算式
 で、
     解消期間が1年以内なら正常先
          3年  〃 要注意先
          5年  〃 要管理先
          5年超なら 破たん懸念先

 とおおむね判断されます。

 債務超過を解消する手立てとしては、究極的には利益アップか増資しかあり
 ません。

 コツコツと営業努力を積み重ね、利益向上を目指すのが王道ですが、それ以
 外に、
    ・含み益のある資産を売却して売却益をだし、税引後利益を大きく
     できないか

    ・返済期限のない役員一族からの借入金があれば、それを自己資本
     に組み入れられないか

 などを検討してみましょう。

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テーマ35.      「銀行融資の担保至上主義は終わった」


 銀行における融資審査の基本は、申し込み企業の返済能力にあります。

 「この融資を実行して、返済は間違いなく履行してもらえるか?」の見きわ
 めが、肝心かなめのポイントであるわけです。

 それでは、担保はどういう役割りを果たすのかと申しますと、万が一不測の
 事態が起こって、融資金の回収ができなくなったときに、物件を換金処分し
 て融資金の回収に充当するためのものです。

 平たくいえば、取りっぱぐれを防ぐためのものです。

 
 今の時代、いかに名のとおった一流企業といえども、世間を騒がす問題が表
 面化すると、あっという間に企業信用力がなくなってしまい、業績急降下の
 状態に陥ってしまうことがよくあります。

 しかし、かつて大企業といえば信用力は絶大で、当然、銀行融資の返済面
 でも何の懸念もないものと受けとめられ、たいていは無担保で融資されてい
 ました。


 銀行の融資は、原則、担保主義です。

 しかし、企業信用力が絶大で、返済面でまったく懸念がない先、あるいは、
 企業信用力は大企業ほどではないが、当面の業況に不安がない先について、
 個別案件次第で担保差入に及ばず、すなわち無担保で支援しましょう、とい
 うのが銀行の基本姿勢なのです。

 バブル期は、この返済能力をろくに精査もせず、「担保があるなら融資しま
 しょう」といった、担保依存の非常に荒っぽい融資姿勢であったわけです。

 まさに銀行も踊り、そして、膨大な不良債権の山を築いたのでした。

 その結果、気の遠くなるような不良債権を処理するために、重く長い時間を
 要したわけですが、そうなってくると、過去の反省を踏まえ、「返済能力重
 視の融資審査の原則に立ち返ろう」という声がでてくるのも当然のこととい
 えるでしょう。

 一時、担保依存融資一辺倒の弊害により、銀行員の審査能力は低下していま
 したが、それも克服されつつあるようです。


 ただ、融資先企業の返済能力を見極めるということは、簡単なことではな
 く、一定レベルの経験と能力を要します。

 銀行が求めるのは企業の今後の返済能力であって、決算書からはじき出され
 る過去の返済能力ではありません。

 そこで必要とされるのが、「目利き力」といわれるものですが、その習得に
 は時間と努力、それにセンスが求められます。

 業界動向とその企業の位置づけ、またその企業の強みや弱みなどを把握して
 今後の収益力をどう見極めるか、そういった能力が問われてくるわけです。


 最近では、政府系金融機関における無担保での融資制度が目につきます。

 これも上述したことを背景にした、国策によるものかもしれませんが、銀行
 員の本音をいえば、「返済能力重視はわかるけど、担保はあるにこしたこと
 はない。その方が安心で楽だ」といったところではないでしょうか。

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テーマ36.      「支店長が代わると融資条件も変わる」


 銀行員に転勤は付きものですが、支店のトップである支店長も平均2年程度
 で転勤していきます。

 今回のテーマである「支店長が代わると融資条件も変わる」のかということ
 ですが、結論は「多少はかわりますが、そう大きくは代わりません」といえ
 ます。

 銀行には様々な権限規程というものがあって、支店長にも審査権限規程とい
 うものがあります。

 それは、支店長が自己の責任範囲内で決裁できる融資案件は、1企業に対し

  ・1案件の金額はいくらまで
  ・案件実行後の総融資金額はいくらまで
  ・総融資金額から担保評価額を引いた無担保部分はいくらまで
  ・上記を超えるものは本部(審査部)決裁とする

 といった具合に、こと細かく定められています。

 また、以上のような自己の責任の範囲内なら、極端な言い方ですが、何を
 やっても良いのかといいますと、そのようなことはありません。

 支店長専決融資は、毎月本部(審査部)に送付され、そこでのチェックが
 待っています。

 したがって、下手なと申しますか、筋をはずした融資なんかを採り上げます
 と、「この支店長の融資能力は疑わしい」との烙印を押されかねないわけ
 です。

 支店長もサラリーマンです。

 融資面だけにとどまらず色んな面で、下手なことをして不適格者と呼ばれた
 くはありません。

 

 さて、支店長に最も求められる能力は何かというと、私はバランス感覚だと
 思います。

 支店のトップとして、支店で起こること、支店内のことはすべて支店長の
 責任だとなるわけですが、そういった守備範囲を広くこなさなければならな
 い立場にある者として、必要なのがバランス感覚ではないかと思うのです。

 当然、職務権限規程などには忠実であろうとするのですが、融資面でいいま
 すと、その対応に支店長個人のキャリア、得手不得手、好みなどがある程度
 にじみ出てきます。

 かなり大ざっぱですが、融資面でみる支店長のタイプ別特徴は、つぎのよう
 なものです。

 1.融資に強いか弱いか
   ・強い人 − 顧客に対しても本部に対しても、自信をもって対応でき、
          メリハリの効いた的確な融資条件を打ち出せる

   ・弱い人 − 自信がないため、顧客にも本部にもヘッピリ腰で対応し、
          自然と次長や貸付課長に頼るようになる

 2.顧客志向 
   ・ある人 − 顧客の意向や要望を受け入れる余地をもっている

   ・ない人 − 銀行の都合を押し付けがちである

 3.出世意欲
   ・強い人 − 本部方針に忠実になる人で、「何が何でも目標を達成す
          る」「不良債権はださない」を旗印に支店行員の尻をた
          たく

   ・ふつう − ほどほどに何事も真ん中にネライを定める、過激なこと
    の人    はしない

 4.キャリア
   ・現場畑 − 営業、外向き、顧客接点に強く商売上手

   ・本部畑 − 何事もスマートに対処、内向き、管理型

 
 銀行との融資取引において、支店長はキーマンであることは、まちがいの
 ないところです。

 一度、自社の取引銀行の支店長は上記のどのタイプにあてはまるか、チェ
 ックしてみるのもたまには必要かもしれません。

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テーマ37.     「銀行の身勝手で非常識な要求に対抗する」


 銀行との融資取引の中で、様々な要求が銀行からもたらされますが、今まで
 に一度や二度は皆さんも頭にこられたことがあったのではないでしょうか?

 代表的なものを挙げますと、つぎのようなものです。

 1.融資の見返りを求める
 
   記憶に新しいところでは、某メガバンクの「優越的地位の濫用」として
   融資の見返りに金利スワップを押し込み販売した、という事件がありま
   した。
  
   ここまで大がかりでなくとも、似たような例は日常茶飯ころがっていま
   す。

   押し込む先は、いずれも融資先としては、銀行との力関係でいくと弱い
   先で、その弱みにつけこんで見返りを要求してくるわけです。

   投資信託や関連会社の商品やサービス、はたまたもうすぐ解禁になる生
   命保険への加入などなど。

   申し込み案件があれば、それを実行する条件として、あるいは融資取引
   を継続する条件として、言い方がソフトかハードとかは色々ですが、要
   は「承諾しないと今回の融資はできませんよ」「承諾しないと今後の融
   資については考えさせてもらいますよ」と迫ってくるわけです。

   「当行としては、今後も精一杯のご支援をさせていただきますので、
   そこは相身互い、何とかご協力をお願いします」とでも言ってくるので
   あれば、まだ可愛げがあるのですが。
  
 2.金利の引下げ、引上げ

   変動金利契約の先は除いて、たとえば短期プライムレートが下がったと
   しても、銀行の方から「御社の○○の金利を××%下げましょう」と言
   ってくることはないでしょう。

   お客さんが、「短プラが下がったのですから、ウチのレートも下げてく
   れるのでしょうね」と言ってきてから、はじめて検討しましょうという
   スタンスです。

   自分ところの不利益になることを、わざわざこちらから言い出す必要は
   ないということです。

   しかし、反対に短期プライムレートが上がったとなりますと、銀行は変
   動金利契約先を除く全先に、もれなく引上げ交渉を行なってくるはずで
   す。

   フェアーじゃない、またお客を甘くみているところがあるのは否定の
   しようがありません。

 3.追加担保の要請と担保解放

   自社の業績悪化、担保評価額の減少、あるいは格付けダウンをにおわせ
   て銀行から追加担保を要請されることがあります。

   銀行取引約定書には、こういった際の追加担保差入についての遵守条項
   がありますが、銀行からの要請に、即OKの返事をされる方はまずいら
   っしゃらないでしょう。

   その際、顧客企業の言い分として、よく耳にするのは不動産担保だと、

   「不動産の価格が上がったり下がったりするのは当り前。
    それを承知で御行も当初、担保取入されたのではないですか。
    じゃあ逆に、担保不動産の価格が上がって、融資金残高をオーバー
    するようになった場合、こちらから申し出れば担保の一部でも解放
    してくれるのですか?」

   というようなことです。

   銀行は、融資金の全額返済でもないかぎり、一度取り入れた担保の解放
   にはなかなか応じません。

   理由を色々とこじつけて、なんとか保全不足、悪化にならないようにと
   お客を説得してきます。

   ここにも銀行の身勝手さがあらわれています。


  以上のような例をはじめ、日常、大小さまざまな要求が銀行からあるので
  はないかと思いますが、その中には受け入れざるを得ないなと思えるもの
  もあれば、どう考えても理不尽だとしか思えないものもあります。

  そういったあまりにも人の弱みにつけこんだ、あるいは理不尽だとしか
  言えない要求に対抗するには、以下のような対策をお考えになったらい
  かがでしょうか。

  1.少しの知識武装は必要です

    詳しい専門知識までは不要だと思いますが、まるっきり無防備だと銀
    行員に甘くみられ、やり込められてしまいます。

  2.銀行本部や監督官庁への問い合わせをにおわせる

    銀行からの要求が、どう考えてもおかしい、あるいは理不尽だと思わ
    れたら、

    「御行本部の関係部署に、一度この件について問い合わせてみる」
    「○○地方財務局に、         〃         」

    というようなことを口にだしてみるのも一手です。

    銀行員は対外的にコトが荒立つことを恐れる習性がありますので、そ
    れで収まるケースもけっこうあります。

  3.複数行取引であれば比較・検討ができる

    複数行取引であっても、取引内容(担保力や長・短借入金の内訳等)
    の違いもあって一概にいえないのですが、

    「この件について、△△銀行さんや◇◇銀行さんは何も言ってきてま
    せんよ」
    「他の取引銀行さんからは、今回の御行のような要求はされたことが
    ありませんよ」

    と切り返してみるのです。

    横並び意識の強い銀行のことですから、それで収まることもあります。  

                                              ↑ テーマの一覧に戻る


テーマ38.    「銀行と融資交渉をする際に注意すること」


 銀行との融資取引では、自社の業績推移、銀行との取引内容などによって、
 銀行との力関係ができてきます。

 大ざっぱに色分けしてみますと、
 
 (イ)銀行からみて良好先、企業側からすると、銀行に対して「別に貴行で
    なくてもいいよ」と優位に立っている先

 (ロ)銀行からみて良くない先で、できたら取引をやめたいと思っている。
    企業側からすると、銀行に面倒をみてもらっている、弱い立場にある
    と自己認識される先

 (ハ)両者の中間的立場の企業で、大多数を占める

 というようになろうかと思います。


 こういった色分けは、もちろん不変のものではなく、良い方向あるいは悪い
 方向へ先々変化していくものですが、上記(ロ)に該当する企業は、融資を
 申し込んだ時点の自社の位置づけを認識し、それに沿って交渉していくこと
 が大事かと思います。

 (ロ)の先は、業況悪化ないし業況懸念先で、今後経営改善がはかどらない
 と追加融資や折り返し融資がストップになることが予想され、現状でもまと
 もにいけば返済能力がでてこない、返済面に懸念があって、銀行に融資実行
 を渋られるところを、あの手この手で交渉し、なんとか現状維持を保ってい
 るような先です。

 こうした企業が融資を申し込んだ際、まず気をつけることは、銀行員も人の
 子ですので、感情のもつれを起こさないようにすることです。

 (ロ)の先から融資の申し込みがあった場合、銀行員の気持ちははっきり言
 ってうれしくありませんし、気が乗りません。

 しかし申し込み企業としては、何としても融資の実行をしてもらわなければ
 なりません。

 そこで、「是非お願いします」の気持ちを心に秘め、明るくさわやかに応対
 することです。
 
 そして提出書類などは機敏に素早く提出し、まちがっても銀行側から「お願
 いしている○○を早く提出してください」などと催促されることのないように
 することです。

 と言っても、こびたり卑下したりしてはいけません。

 大事なことは、少しでも早くそういった弱い立場から抜け出せるよう、業績
 向上に向け頑張ることです。

 そして、その前向きな気持ちとそれが表現された資料なりを銀行に示すこと
 です。

 再度言いますが、銀行員も人の子ですので、顧客のそういった前向きな思い
 や態度は必ず伝わるもので、ふつうの感覚の持ち主ならば、「よし、なんとか
 力になれるようやってみよう」と思うものです。


 銀行の融資先企業に対する最大の関心事は、「この企業の返済能力はどうな
 っていくだろうか?」ということにあります。

 そして融資先企業への支援続行の可否を、最終的には商業ベースで判断しま
 す。

 したがって、情に訴えて頼み込んでもダメなものはダメというところもあり
 ます。

 それならば融資先企業としましては、収益力向上や財務内容の改善に向け、
 このように努力している、という姿を形に表して銀行に示すことが銀行の心
 証も良くなり効果的だと思います。

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テーマ39.   「試算表は大事です」


 あなたの会社では、試算表を作成されていますか?
 
 作成されていない方にお聞きしたいのですが、その理由はどのようなことで
 しょうか?

 ・なぜ、そのようなものを作らないといけないのか、必要性を感じない
 ・必要性は感じるのだが、それをやる人材がいない

 以上のようなこと以外にも、各社各様の理由があるかもしれません。


 いずれにしましても、最近の市販の会計ソフトは、会計の素人でも簡単に操
 作できるように性能がアップされていて、しかも値段は手頃で安いなと感じ
 る価格帯です。

 私も当事務所の会計処理は、市販の会計ソフトを使ってやっています。

 「試算表なんて会計事務所で作ってもらうもの」といった旧い観念をお持ち
 の方は、現在ではほとんどいらっしゃらないと思いますが、これだけパソコ
 ンが普及された昨今、できるだけ自社で試算表を作成(自計化)されること
 をお勧めします。

 なぜかといえば、「直近の試算表によって経営状態をチェックして、必要な
 対策を素早くこうじる」ことが可能だからです。

 これが、「試算表は大事です」という一つ目の理由です。

 しかし、会計事務所に領収書や銀行通帳などを預けて作成依頼していると、
 こういったリアルタイムな行動はとれません。

 また、試算表の必要性を認識されておらず、作成されていない企業では、経
 営実績の動向は経営者の頭の中だけにあり、しかも内容的にはアバウトで概算、
 感覚的なものになりがちです。

 これでは、対策が不十分であったり、あるいはまちがった判断を下し、場合
 によっては方向違いの対策を打ってしまう、といったことにもつながりかね
 ません。

 タイミングよく作成された試算表により、経営状態を目に見える数字で正確
 ・客観的に把握して次に生かす、すなわち必要な対策をこうじるという一連
 の行動は、経営の基本といわれる「PLAN(計画)・DO(実行)・SEE(評価)」
 の一部分で、きわめて重要なことなのです。


 つぎに試算表が大事な理由の二つ目は、「銀行への提出書類として」です。

 銀行は、融資先企業の業況推移を常に注目しています。

 したがって、融資案件が起こったとき、企業の決算期から3ヶ月位経過して
 いれば、たいてい試算表の提出要請があります。

 ところで、試算表はたいてい月次で作成するものですから、業績面が月によ
 って大きくブレルときがあります。

 たとえば、来月上旬に得意先に納品予定の商品が海外に生産委託しているも
 のであるため、それらの商品の仕入時期が今月末近くになる、といった場合
 、まとまった金額であれば、今月と来月の売上・仕入の数字がアンバランス
 になります。

 極端にいえば、今月は大幅な赤字、来月は大幅な黒字となるわけですが、説
 明すれば銀行側の納得は当然得られますから、こういった点は気にされる必
 要はありません。

 近々に融資の申し込みを予定しているときは、試算表の状況が良いときに自
 主的に銀行へ提出しておくのも一手です。


 先に述べましたように、銀行は融資先の業況推移を注目していますので試算
 表を要求するのですが、その際、企業側から「ウチは会計事務所で作っても
 らっていますので、手元にあるのは3ヶ月前のものですが、それでよろしい
 でしょうか?」と言われる場合があります。

 これを聞いた銀行員の反応はいかがでしょうか?

 「旧態依然だなあ」と思われるでしょうし、直近のものを即座に渡されるの
 とでは、印象がまったく違ってきます。

 たしかにスピード面での進歩がありませんので、時代の流れにあわせた改善
 が必要ではないかと思います。

 
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テーマ40.   「銀行交渉における有力手段 〜 簡単でもいいので
           事業計画書(経営改善計画書)を提出しよう」



 顧客から融資の申し込みがあり、それを銀行が審査する際に最も重要視する
 のが、その企業の返済能力です。

 通常、融資を受けている企業は、毎年決算納税を済ますと、税務申告書類一
 式の写しを銀行に提出します。

 銀行は、これを数期連続の時系列様式で、コンピューター分析にかけます。

 そして、そこに表示された、返済原資である‘税引後純利益+減価償却費=
 キャッシュフロー’と借入金残高により、借入金の償還年数が何年かを計算
 してみることにより、

   「10年をきっているから、まあ大丈夫だろう」とか
   「なんと35年にもなるか?これではちょっと難しいな」というように、

 申し込み企業の返済能力を判断するわけですが、今申し上げているのは、
 すべて過去の決算書に記載されている計数にもとづく判断です。

 比較的、景気の動向が緩やかで、横ばいか上昇傾向にある時期であるならば
 過去の実績の延長線上で返済能力を判断しても、そう大きな判断ミスは犯さ
 ないでしょう。

 しかし、現在のきわめて厳しい経済環境を考えてみた場合、その考えはあて
 はまりません。

 前期までは、まずまずの業績を上げてきた企業といえども、その実績を引き
 続き達成することは目先の今期においてすら危うく、未達成になる可能性が
 高い状況にあるといえます。
 
 では、銀行は融資申し込みがあった企業の返済能力をどのように判断してい
 くのかと申しますと、

    ・前期決算から申し込み時直近の試算表を提出してもらって
     その間の実績を把握し、
    ・試算表の月から今期決算月までの計画数字と主要施策など
     を聞き取り、通期合算の業績を予想し返済能力を試算する

 というような手順になろうかと思います。


 そこで、銀行から要請がある前に先手を打って、自主的に事業計画書(経営
 改善計画書)を提出するのです。

 「…………計画書」というと、肩肘張って身構えて、必要以上に難しく考え
 がちですが、形式を重視することなく、最低限織り込まなければならない

    ・今期を含め、向こう3〜4年程度の損益予想
    ・その計数を達成するための具体的施策

 を自社のオリジナル様式で記述すればよいので、手を動かせてみましょう。
 
 この2者は一体のもので、計数計画のみでは裏づけ・信ぴょう性に欠けます
 し、具体的施策の文章のみでは、銀行員が一番知りたいもの=数字がないわ
 けです。
   

 作成時の注意点として言えるのは、義務的に作らないことです。

 とにかく提出すればいいんだと気持ちでとりかかると、上っ面だけのとおり
 いっぺんのものになってしまいます。

 社名を変えれば、どこの企業のものとしても通用しそう、といったものは、
 かえって銀行の信用を損ねます。

 真剣に検討されたものかどうかは読み手に伝わるものですので、ご留意くだ
 さい。


 事業計画書(経営改善計画書)は、銀行員が一番欲しいと思っている資料で
 す。

 なぜかと言えば、これがあると融資稟議書が書きやすく、手間ヒマが省け、
 作業がはかどるからで、俄然作成意欲が湧いてきます。

 このように、事業計画書(経営改善計画書)を提出することは、銀行の担当
 者を手助けすることであり、それによって稟議がとおりやすくなるというこ
 とは、結果的には自社のためでもあるのです。

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