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はじめに

返済条件の変更(リスケジュール)を銀行にお願いしようと決断するまでに
検討しなければならないこと、あるいは気をつけなければならないこと、
そして
行動に移す際の手順、ノウハウ、注意事項等について述べています。

 

目 次

1.リスケに対する重要な心構え

2.リスケの交渉手順と交渉ノウハウ

3.リスケ申請に必要な書類とはどのようなものか

4.銀行のリスケに対する考え方と受入れ方針

5.リスケについての重要な注意事項




1.リスケに対する重要な心構え

(1)  自社はリスケジュールの申請ができる企業か
   「 営業利益段階では黒字を計上しているが、借入金が過大なこともあって
    銀行への返済負担が大きく、社員への給料や仕入先への支払に支障がでてきて、
    このままでいけば数ヶ月先には資金ショートするかもしれない」

    表面的には、上記のような企業がリスケ申請に該当するような企業のように
    思えますが、さらに下記のような条件をその企業が備えているか否かが重要な
    ことだと思います。

    すなわち,「リスケによって時間的な猶予をいただければ、その間にコレコレの
    改善策を実施して、経営内容を改善していきます」というように、具体的な
    経営改善計画をもっているか否かが、本当にリスケ申請に該当する企業か否かの
    分岐点になるということです。

  この改善策の実施が無いリスケは、単なる時間稼ぎにすぎません。

   あるいは、その企業の傷み具合がひどい状態であれば、リスケは結果的には
    延命措置にしかならなかったということになりかねません。



(2)資金繰り改善の「うまい方法」ではない
      よくある質問で、「資金繰りを改善するのに、何かうまい方法はないでしょうか?」
    というのがあります。

      リスケジュールがそれに該当する方法だと認識されている方がいらっしゃる
    ようですが、それは誤った考えです。

      リスケジュールは、資金繰り改善の根本的な解決手段ではなく、銀行に、
    一時的に譲歩してもらっただけのことなのです。

      このあたりの事情をはきちがえたままでいると、リスケジュール後の結果は
    目に見えていて、企業の実態はリスケ前より悪化しているかもしれません。

      資金繰り改善策は、収益力の向上こそが根本的な解決策であり、それ以外に
    妙手妙案はないものと考えます。


3)社長の強い決意と覚悟
     リスケジュールを申請するということは、その企業の資金繰りは非常に厳しい
    状態にあるわけで、言い方をかえると、資金繰りは破たん状態にあるとも
    いえるわけです。

     自社のそういった非常事態に直面し、社長の「わが社を絶対に再建するぞ」
   「借りたカネは必ず返すぞ」という会社再建に向けた強い決意と、
   「わが社にはもう後がない、何としてもこの際、銀行の協力を仰ごう」といった
    背水の陣を敷く覚悟が、銀行を揺さぶる原動力になるのです。


(4)目的ではなく手段である
       人間は誰しもやすきに流れるものです。
       銀行へのリスケの申請が承認・実行されると、返済が軽減されるため、
     月を追うごとに資金面の余裕がでてきます。

       そうなってくると、何か目的を達成したような安心した気分になってきて、
     困難に立ち向かう気力が失せてきます。

     “リスケ期間中にやらなければならないこと”は後述しますが、これにまったく手を
     つけようとせず、何の経営改善努力もなくリスケ期間終了となった場合、
     結果は目に見えています。


       リスケという手段を、銀行の協力を得て使わせてもらっているということを
     忘れてしまってはいけません。


 (5)自社の立場を考え、身を削る
        リスケは、相手(銀行)に無理をいって負担をかけることです。
        したがって、無理をお願いする側としては、えりを正し我が身を削って改善に
      努めますという姿勢を示すことが、無理をお願いする相手への礼儀では
      ないかと思います。

      具体的に申しますと、社長をはじめとした役員の報酬削減、リストラによる
      経費の圧
縮などは当然のこととして進めていかなければなりません。

        銀行サイドの人達からみると、リスケ申し出企業のそういった姿勢を受けとめて、
      「よし、それならば何とか力になれるように頑張ってみよう」との心境に至るもの
        なのです。


(6)利息だけは払い続ける
        リスケについての質問の中に、「リスケは利息も棚上げできるのでしょうか?」
      というものがあります。

        ないことはないのですが、銀行への支払利息すら棚上げなんて、リスケの中でも
      最悪の部類です。


       銀行にとって貸付金利息は売上であり、いくら顧客からの無理な申し出を聞くと
      いっても限度があります。

        返済元金のリスケはあっても、死に体の企業でない限り、支払利息の棚上げなんて  
      考えないで、最低限の義務として、利息は支払っていくことが必要だと考えます。


 (7)リスケを上手く活用するコツ
       一番大事なことなのですが、何のためのリスケなのか?ということです。
        くり返しになりますが、リスケは手段であって目的ではありません。

        自社をどのようなレベルにもっていくために、この制度を利用するのか?
        それがはっきり意識され、またそれを達成するための改善具体策を、
      行動計画まで含めて具体的に策定できるかどうかが、肝心なところなのです。


        リスケを単なる時間稼ぎとか、問題の先送りに終わらせると、破たんの可能性が
      高まってきます。

        そうならないためには、事前の入念な検討は欠かせません。




2.リスケの交渉手順と交渉ノウハウ

(1)  決まった方程式はない
リスケジュールは銀行との交渉ごとであり、1+1=2のように、
こうすれば必ずこうなるといったような、決まりきったものはありません。

         ・自社の業況
         ・銀行との取引内容
         ・銀行のリスケジュールに対する方針
           などにより、相対取引で個別のリスケジュール案件は、その方向性が決まって
       きます。

          したがって、「○○君の会社がしてもらったからウチ(自社)もやって
       もらえるかな」ということはありえないのです。

           ただし、このような条件で話をすれば、銀行はこう反応するだろうなといった、
       おおよその方向性には決まったものがあります。


(2)交渉の手順
 各取引銀行の約定返済日が毎月10日で、今が1月下旬、3月からのリスケ実施を
  目
標としますと、

○2月10日の返済日までに、
      各取引銀行の支店窓口に出向き、自社の経営実態、資金繰り予想などを話し、
     「2月10日は今までどおり返済しますが、3月以降は返済できない
     厳しい状況です。

       つきましては、返済の繰り延べ(リスケジュール)をお願いしたいと
     考えています。

     近いうちに資料を持って、あらためてお願いにうかがいますので、
     その折はよろしくお願いします」

         と、まず申し入れをします。
           その際には、申し入れ内容が確認できる簡単な資料を持参する方が
         望ましいでしょう。

○2月10日の返済が過ぎ、
             2月15日までを目途に、提出書類を持って各銀行に出向き、
         リスケの申請をします。

             この時点における銀行の受けとめ方は、おおよそは半信半疑では
        ないかと思います。

         約定どおりの返済が続いている限りは、「返済できなくなるなんて
         言っているが、本当かなあ」くらいの気持ちです。

○そして3月10日の返済は、
         それまでに各行の承認が降りていなければ、現実に引き落とし不能にして
        延滞を発生させます。

        延滞の事実が発生して、銀行サイドもはじめて
       「返済できなくなると言っていたのは本当だったんだ」と思うくらいです

○以後、10日おきくらいに
           各銀行に連絡を入れ、銀行内部での自社が申し込んだリスケ案件の
        進ちょく状況をフォローしていきます。

 

(3)遅れている金融機関を急がせる
   リスケ実行は、全取引銀行が揃ってスタートしてもらうのが理想的です。
       が、現実的には各銀行にリスケに対する温度差もあって、対応は一律には
     進みません。

       そこで、対応が遅れている銀行にはスピードアップしてもらうよう催促
     しなければなりません。


   「◇◇銀行さんは、もう承認がおりました」
      「■■銀行さんは、今週末には結論がでる見込みです。御行もいろいろと事情は
      おありだと思いますが、全体の足並みが揃わないと意味がありませんので、
      何とぞご協力ください」

        というように催促します。

        しかし、最悪、自社の要望をギリギリ譲歩したとしても、基本的に相いれない
      銀行がでてくる場合があります。

        その際はやむを得ません。
        その対応が遅れている銀行との折衝は継続することにして、その他の銀行の
      リスケ実行は見切り発車でやってもらうしかありません。


(4)全取引行に一斉に申し入れる
       複数の銀行と取引がある場合、「ヨーイドン」で各銀行へいっせいに上記のような
     アプローチを行なっていきますが、出向いていく銀行の順番としては、
     借入残高の一番大きい銀行(いわゆるメイン銀行)にまず申し入れをして、
     順次、2番目、3番目に残高の大きいところへと出向いていきます。

       融資取引は個別の相対取引ですので、いっせいにアプローチを行なっても足並みが
     揃うことはまずありませんが、銀行というところは他行の動向を非常に気に
     するところです。

    自行にはリスケの申請をしているのに、他行にまだ申請をだしていないのであれば、
     自行の内部手続きを先行して進めようとはしないところもあります。

     「◇◇銀行さんには何故まだ申請されないのですか?ウチ(自行)はそれを待って
     協議ないし稟議にかかりますので、またご連絡ください」くらいのことは
     言ってきます。

       また一つの考え方として、まずメイン行に申請して、その結論をもって、
     「メインの■■銀行さんはこのような条件でリスケ対応をしてくれることに
     決まりましたので、御行もぜひ追随していただきたいのですが」

      というような流れでその他の取引行に申し入れをしようと目論んでも、
     メイン行の決着がスムーズに運ぶとはかぎりません。

       予想外に手間取って時間がかかった場合、その結論をもって次の取引行へと
     考えていると、自社サイドで考えていた全取引行そろってのリスケスタートの
     タイミングがうんとずれ込むことにもなりかねず、最悪、自社の資金繰りが
     大きく狂ってくるような事態になるかもしれません。

       そのような事態を避ける上からも、リスケ申請の申し入れは全取引行いっせいに
     行なうのが望ましいと考えます。


(5)直近の借入時期に注意する
  
リスケ申請を検討している中で、「あっ!◇◇銀行で長期20百万円を借りたのは
  先々月末だったよな」というようなことがでてくるかと思います。

   こういった場合は、慎重に対処する必要があります。

       と申しますのは、直近の融資が実行されてからまだ2ヶ月にもならないのに,
     無頓着にその銀行にリスケを申し込んだ場合、その銀行の受けとめ方は、

    「この間融資したばかりなのにリスケを申し込んでくるなんて、それじゃダマシ
     じゃないか、この企業は一体何を考えているんだ」

       といったことになります。

       では、直近の融資実行日からどれくらい時間が経っていればいいのか、
     という疑問をもたれるかもしれませんが、明確な基準はないのですが常識的に
     考えて、この場合3ヶ月程度の時間的経過が必要だと思います。

       3ヶ月という時間の中では、売上の低下など企業内容に様々な変動が起こりうる
     のではないでしょうか。


(6)どうして欲しいのか、自社の要望を具体的に示す
       リスケは交渉事ですから、当方の要望がすんなり受け入れられることもあれば、
     なかなか受け入れてもらえず交渉が難航する場合もあります。

       そういったことを考えた場合、まず必要になってくるのが、はじめに当方の
     要望事項を具体的、明確に提示しておくことです。

     “向こう1年間、元金返済をゼロにしてほしい、ただし利息は通常どおり支払って
     いきます”という具合に明確に示すのです。

       それを、“向こう6ヶ月から1年、元金返済は極力少なく、できたらゼロで”と
     いうように中途半端に申し込みますと、交渉は悪い方に展開していきます。

       銀行サイドからしますと、「この企業は、ウチ(当行)に対して一体どうして
     欲しいんだ?そんなアバウトな要望では検討のしようもない」と印象も悪くなり、
     銀行からの回答は自社にとって不利なものとなってきます。




(7)落としどころを想定し、最初は自社にとって最も有利な条件で依頼する
       リスケを申し込むに際して、いろいろと検討する中で、
      「最初のリスケ期間はやはり6ヶ月かな、できたら1年の方が有り難いけど。
       それと返済元金はゼロでは難しいだろうなあ、いくらかは覚悟しておかないと
     いけないかなあ」 と思案されることがでてくると思います。

     こういった場合は、自社にとって最も有利な条件、すなわち向こう1年間、
     元金返済ゼロで申し込むことです。

       そうすることで、この先でてくる各銀行からの様々な反応に対して、落としどころを
     心得た上で、譲歩すべきところは譲歩して、また突っ込むところは突っ込んで
     交渉していけるようになれると思います。

       ただし、一つ心得ておいていただきたいのは、元金返済ゼロはなかなか受け入れて
     もらえないということです。

       これは銀行としては、企業側に返済の意思があるということを示してもらいたいと
     いう基本的な一線があるためです。



(8)社長の熱意、強い決意が決め手
       リスケ申請は、自社の一大事なのですから、まず社長が前面に出て各銀行に
     お願いすることが必要です。

       そしてその際の社長の言動が、コト(リスケ承認)の成否に大きく影響してきます。

       ここで、相手方である銀行員に、「うむ、この社長なら大丈夫だ」と認識して
     もらえたならばシメタものなのです。

       と申しましても、なにも社長の演技が必要だと言っているのではありません。

       正味のお気持ちとしてあるかどうかが問題なのですが、
     「このたびはご無理をお願いしますが、返済猶予(ないし軽減)のお時間を
     いただいている間に、わが社を……という手立てで改善していきます。」

      というようなことを、言葉巧みに流ちょうでなくても、自分の言葉で一生懸命に
     話されることが大事です。

       話を聞いた銀行員は、社長の会社再建にかけるその熱心さ、一生懸命さ、
     人柄の誠実さに心打たれて、「よし、この企業のために一肌ぬいでみよう」と
     思うものです。

       多分に浪花節的かもしれませんが、しょせん人間対人間なのですから、
     あながち間違いでもないと思います。





3.リスケ申請に必要な書類とはどのようなものか
 
    取引銀行にリスケの申請をする際、口頭によるお願いだけではコトは進みません
  銀行としては、顧客企業からのリスケ申し出の可否を検討する材料が必要なのですが、
   口頭のみでは検討のしようがありません。


  銀行内部では、稟議制度によって、融資の可否が判定されます。
  したがって、担当者に自社のリスケ申請の稟議書を作成してもらわなければならず、
   さらに申込企業としては、担当者が稟議を上席者に上げやすくするよう配慮しなければ
    ならないのですが、その際、これら提出書類の出来・不出来が大きく影響してくる
   わけ
です。

  提出書類として必要なのは、つぎのようなものです。


          ◆借入金の返済条件変更のお願い     

経営改善計画書           

◆損益計画書              

◆資金繰り表              

◆銀行取引一覧表           

  では、順を追って各書類の内容等について説明していきます。


◆借入金の返済条件変更のお願い
   挨拶文を兼ねた正式なリスケの依頼文書で、取引銀行別に作成します。
  中味は、まずその銀行での長期・短期の融資明細を個別にすべて記載します。

 そして、それら融資の返済方法をどのようにして欲しいのか、自社の要望する
  返済方法を個別明細一本ごとに記載していきます。

  最後に、リスケ申請理由を簡潔に記します。(これは各銀行共通です)


◆経営改善計画書
   提出書類の中でメインとなる最重要書類で、内容としては、今後どのように
  経営改善していくか、その具体策を書いていきます。

   売上アップ、仕入(製造)原価の低減、人件費を含めた一般経費の削減など
  収益力向上に向けての具体策ですが、ポイントは自社の独自性がでるようすることです。

 作成時の注意点ですが、技術面のことなど、あまり専門的になりすぎると銀行の
  人達には理解できないことがあります。

 したがって、表現は“わかりやすく、具体的に”を心がけて、読み手が「なるほど」と
  納得するものになることが大切です。

 
  また具体策は、とおりいっぺんのこと、ありきたりなことは排除し、実現性・実効性の
  観点から、これはというものを検討しみてください。

   全社一丸となって、「後がない」背水の陣の決意で取り組めば、それなりのものが
  でてくるはずです。


◆損益計画書
 直近の決算の実績と、今期(現在進行期)を含め先行き3期間程度の計数面の
  計画表で、上記の経営改善策を実行して、業績がどのように推移していくのかを
  計数で具体的に示すわけです。

 銀行サイドの最大の関心事は、返済原資(当期純利益+減価償却費)の推移で、
  あと何年で借入金を完済できるのか、といった点を常に注目しています。


◆資金繰り表
 向こう1年間程度の資金繰り計画・予想です。

 銀行へ現状の返済を続けていった場合、XX月頃には資金ショートが発生する、
  したがって毎月の返済を軽減して欲しい、ということを各銀行に訴えて認識して
  もらうことを目的としています。
 

  できれば,返済額を現状のままとしたものと、リスケ申し出の返済額としたものとの、
  2枚を作成します。

   二通りを作成することで,申し込んだリスケ案実行により、資金繰りはほぼ支障なく
  回っていくことが確認できます。


◆銀行取引一覧表
 直近の月末現在での、銀行ごとの個別融資明細をすべて記入します。 
  いいかえると、上記「借入金の返済条件変更のお願い」で記載した融資明細を
  一覧表にしたものです。

  これによって、各銀行は全体の銀行取引の中での、自行の位置づけを認識・確認
  するわけです。




4.銀行のリスケに対する考え方と受入れ方針

(1)銀行にとっては有難くない話
  まずこれは当たり前のことだと、皆さんもご納得されるでしょう。
   銀行サイドの本音は、「できれば頑張って正常返済を続けてくださいよ」です。

      従来、銀行からすると、リスケ対応した企業の債務者区分は良くて「要注意先」に
   落とさざるを得ず、そうなると貸倒引当金の積み増しが発生し、それだけ
   コストアップ要因となるのですから、できうるなら正常返済を続けて欲しいと
   願うのは、もっともなことだったのです。

     そうした中、金融庁は、平成21年年11月に金融検査マニュアルを改定し、
   条件変更を行なっても不良債権にならない取扱いを拡充しました。

    金融円滑化法は平成25年3月末をもって終了しましたが、金融庁のお達しも
  あって、
その精神は以後も引き継がれることになりました。


     こういった点を考えれば、銀行も随分とリスケを受入れやすくはなったのですが、
    本音を言えば、「いくら積極的にリスケ案件を消化して、実績を上げても
    収益に貢献するわけでもない」といったところでしょう。
  

        とはいうものの、世間一般の風潮として「リスケなんてとんでもない」と
    言われた過去に比べれば、現在、金融円滑化法の精神は生きている
    わけであり、全体的に聞く耳を持とうという姿勢に銀行は大きく
    変化してきています。



(2)リスケの受けとめ方には、銀行間で温度差がある
       この点については、以下のような3つのグループに分けることができます。

       積極的とまではいえないまでも、長年懇意に付き合ってきた相手企業の
        窮状を見かねて、リスケ対応をしましょうという銀行

          以前は、「当行ではそういう対応は、銀行の方針としてやっていません」と
     拒否の姿勢を貫く、あるいは自行として対応できるリスケの条件をあらかじめ
     決めておき、それに従える先のみ対応しましょうという強硬派であったが、
     最近では、金融検査マニュアルの改定や金融円滑化法を経て、渋々ながらも
     時勢への追従の姿勢をみせている銀行

         上記2者の中間的な感じで、ビジネスライクに淡々と最終結論の可否にかかわらず
        手続を進めようとする銀行


 (3)銀行は他行の動向を気にする
        銀行は過去、護送船団方式で保護されてきた時代の名残りで、元来、横並び意識が
     強いのですが、リスケ対応においては、自行のみが不利益をこうむるのは避けたい
     との思いが強く、自行と同様にリスケの申請をした他行の動向を非常に気にします。


       これについては、以下のような例があります。

     ある企業が、メガバンクと地元信用金庫の2行にリスケ申請をしました。
     両行庫とも向こう1年間、元金返済ゼロで申請したところ、メガバンクの
     対応は早く、
すんなりと申し出どおりで承認されました。

    一方の信用金庫については、何事につけアクションが遅く、当社社長が矢の催促を
     繰り返し、やっと本部申請にこぎつけたところ、元金返済がゼロではどうしても
     承認がおりないため、やむを得ず元金返済1万円で承認してもらいました。

    そして、この信用金庫の結論をメガバンクに伝えたところ、その反応は
 「それでは当行も元金返済ゼロではなく、1万円にしていただかないといけませね」
  というものでした。

          
                                  

(4)銀行は、リスケ申し出企業が生き残れるかどうかを見極めて対応を決定する
ある地銀の支店管理職の人は、「リスケの申し出があると、その企業が例えば技術力
とかで優れていて、将来的に生き残っていけるかどうかを見極めて対応を
決定しています」というようなことを言っていました。

      まさにそのとおりだと思います。

       しかし、はたしてどこまで突っ込んで見極めようとしているのか、その能力面には
       限界があるように思います。

       したがって、リスケ申し出企業としては、自社の強み(=どのような企業でも
    競合他社にはない、何がしかの強みはきっとあると思います)を最大限アピール
    することが大事なことではないかと思います。




5.リスケについての重要な注意事項

(1)リスケをするにも費用がかかる

  ○借入金利の引上げ要請がある
     基本的には、引上げ要請があるものと覚悟しておかなければなりませんが、
     そこは交渉力です。

     自社の財務内容や業績推移などが極端にひどくなければ、引上げ要請が
     あったとしても、強気に跳ね返すことが大事で、そういった場合、案外と銀行側は
     さっと引き下がることもあります。

     要するに、銀行側もダメモトで金利引上げ要請を言い出してくることが
     あるわけです。

 
  ○保証協会の追加保証料
      銀行がリスケ対応をするということは、金融検査マニュアルの改定により、
     従来どおり正常先にとどまる先もある反面、債務者区分を落とさざるを得ず、
     企業の信用リスクが増す先もでてきます。

      そういった先に対して銀行としては、貸倒引当金の積み増しなどコスト増と
     なるため、その見返りとして金利を引き上げることによって、また保証協会は
     リスク負担増を追加保証料で回収するというわけです。

 

(2)リスケ期間中は、新規の借入は原則不可
       リスケをしてもらった企業は、銀行からすると正常返済先(債務者区分でいう
    「正常先」という意味ではありません)ではないわけですから、正常返済にもどる
     まで銀行は新規融資には原則応じません。

    長期借入のリスケ対応をした銀行に、あらためて長期借入の新規実行を申し込んだ
  場合の銀行の考え方は、「返済負担が大きいということでリスケに応じたのに、
  新規融資を実行すれば、また新たな返済負担が発生する。その返済はどうする
  のですか?
  それでは理屈に合わないでしょう」というものです。

  では、融資の形態が異なりますが、常時受取手形を割引してもらっていた
  企業などはどうなるのでしょうか。

   正常返済にもどるまで新規融資に応じてくれないとなってくると、
  たちまち困ります。

       そこでそういった場合、銀行は100%応じないというわけではありません
  手形振出人の信用力が絶大(たとえば超一流企業の振出)であるとか、
  追加担保が可能といったような場合は柔軟に対応しましょうという銀行もあります。

   これらの条件もなかなか厳しいものですが、銀行が最大限譲歩したとして、
  手形銘柄(振出人)が、特定先に集中せず分散されていることを条件に応じた
  ケースもあります。

   ここでも相対取引の交渉事となるわけです。

 
(3)ホッとして、何も改善・向上せず
       リスケ期間中、返済が軽減されることからくる資金余裕にホッと一安心して、
     困難なことに立ち向かう気力が失せてしまい、結局経営内容が何も改善
     ・向上することなく、元の返済条件に戻った途端に延滞発生、ないし最悪倒産と
     いった例がよくあります。

       リスケ本来の趣旨に沿って、復活再生できる企業はごく一握りと言えるでしょう。
       要は危機感があるかどうか、そして危機感を持ち続けることができるかどうかが、
     企業再建の分岐点とも言えるのではないでしょうか。



(4)リスケ申請は二度できない
   リスケ期間が過ぎ元の返済条件に戻ったが、またぞろ資金繰りが悪化したので、
  「もう一回リスケをお願いします」は聞いてもらえません。

   これは、自己の努力が足りなかったことを棚に上げた、あまりにも虫のよすぎる
  話だと受けとめられるのです。

   こういった事態に至らないよう、十分心してかからなければなりません。

 
(5)リスケをいつまで引っ張れるかは、ケースバイケース
     「リスケをしてもらった場合、どのくらいの年数を引っ張れるものか?」は、
    よく聞かれる質問です。

      これに対する答えは、一概には言えないのですが、平成23年末頃までは、
    せいぜい2年といったところでした。

     しかし、平成24年に入り、「出口戦略」といったものがクローズアップされ、
    条件変更を行なった先についてどう決着をつけていくかに焦点が絞られてきた
    わけですが、今後は断定的・包括的なことは安易に言えず、あくまで個別企業の
    経営改善状態はどうなのか、といった点にかかってきています。

   リスケを申し込む企業としては、できるだけ長い期間引っ張りたいという思いが
    強いでしょうが、銀行サイドにすれば、リスケ企業の経営内容がいつまで
    待っても改善されない、ここが限度と見極めをつけたらリスケを打ち切り、
    回収にかかってくるようになります。

 





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